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労働法・職場の権利ガイド【外国人向け】

外国人技能実習生の権利保護制度

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年2月25日更新日:2026年2月28日
外国人技能実習生の権利保護制度

外国人技能実習生が知っておくべき権利保護制度を徹底解説。OTIT(外国人技能実習機構)の役割、母国語相談窓口一覧、監理団体の選び方、パワハラ・賃金問題への対処法、2027年施行の育成就労制度まで網羅的に紹介します。

外国人技能実習生の権利保護制度

日本で働く外国人技能実習生は、多くの法的権利によって保護されています。しかし、制度の複雑さや言語の壁から、自分の権利を十分に理解していない実習生も少なくありません。2024年6月末時点で技能実習生は約425,714人に達し、10年前の2.5倍にまで増加しています。本記事では、技能実習生が知っておくべき権利保護制度の全体像を、相談窓口や最新の制度改正情報とともに詳しく解説します。

技能実習制度における基本的な権利

技能実習生は、日本の労働基準法をはじめとする労働関連法規によって、日本人労働者と同等の法的保護を受けます。これは技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)によって明確に規定されています。

技能実習生に保障される主な権利は以下の通りです。

  • 同等報酬の原則: 技能実習生の報酬額は、同じ業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません
  • 最低賃金の適用: 各都道府県の最低賃金が全面的に適用されます
  • 労災保険の適用: 業務上のケガや病気に対する補償が受けられます
  • 有給休暇の権利: 6ヶ月以上勤務し、出勤率が8割以上であれば年次有給休暇が付与されます
  • 帰国旅費の負担免除: 帰国旅費は実習実施者または監理団体が負担する義務があります

また、食費・家賃・水道光熱費等を技能実習生に負担させる場合は、実費相当額とすることが定められており、不当に高額な控除は禁止されています。

外国人技能実習機構(OTIT)の役割と保護機能

外国人技能実習機構(OTIT: Organization for Technical Intern Training)は、技能実習生の保護を主な目的として2017年に設立された認可法人です。OTITは以下の重要な役割を担っています。

実地検査の実施

OTITは、監理団体に対して毎年1回以上、実習実施者(受入れ企業)に対して3年に1回以上の実地検査を実施しています。検査で法令違反が発見された場合、監理団体の許可取消しや実習計画の認定取消しなどの行政処分が行われます。

母国語相談の提供

OTITでは、技能実習生が母国語で相談できる窓口を設けています。ベトナム語、中国語、インドネシア語、フィリピン語、英語など多言語に対応しており、電話やメールで相談が可能です。

技能実習計画の認定

すべての技能実習計画はOTITの認定を受ける必要があり、不適切な実習内容や労働条件が事前にチェックされる仕組みになっています。

保護機能内容対象
実地検査法令遵守の確認・行政処分監理団体(毎年)・実習実施者(3年ごと)
母国語相談多言語での電話・メール相談全技能実習生
計画認定実習内容・労働条件の事前審査新規・変更の実習計画
申告受付不正行為の通報受理・調査全技能実習生・関係者
転籍支援やむを得ない場合の転籍先紹介権利侵害を受けた実習生

監理団体による保護と選び方の注意点

監理団体は、技能実習生の受入れにおいて重要な監理・保護の役割を果たします。しかし、すべての監理団体が適切に機能しているわけではないため、注意が必要です。

監理団体の保護義務

監理団体には以下の義務が課されています。

  1. 3ヶ月に1回以上の定期監査: 受入れ企業を訪問し、実習の実施状況を確認
  2. 母国語相談窓口の設置: 技能実習生が安心して相談できる環境の整備
  3. 生活支援: 住居の確保、日本語学習支援、生活全般のサポート
  4. 入国後講習の実施: 日本語教育、法的権利の説明、生活ルールの指導

優良な監理団体の見分け方

出入国在留管理庁では、監理団体の一覧や行政処分等の情報を公開しています。優良な監理団体を選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  • 法令違反の履歴がないこと: 過去の行政処分や不正行為の有無を確認
  • 技能評価試験の合格率が高いこと: 実習生の技能習得を適切にサポートしている証拠
  • 監理費の透明性: 内訳が明確で、金額が適正であること
  • 相談体制の充実: 母国語対応の窓口が実際に機能していること
  • 既存利用企業の評判: 同じ監理団体を利用している企業に実態を確認

⚠️ 相談窓口を設置していると謳っていても、実際には対応が不十分な監理団体も存在するため、事前の確認が重要です。

技能実習生が利用できる相談窓口一覧

権利侵害やトラブルに遭った場合、技能実習生は複数の相談窓口を利用できます。すべて無料で、多言語対応しています。

相談窓口対応言語連絡方法主な相談内容
OTIT母国語相談ベトナム語・中国語・インドネシア語・フィリピン語・英語等電話・メール労働条件・暴力・ハラスメント全般
都道府県労働局 外国人労働者相談コーナー多言語対応(地域により異なる)電話・来所賃金未払い・解雇・労災
法テラス通訳付き対応電話・来所法律問題全般・弁護士紹介
外国人労働者弁護団多言語対応電話・メール法的トラブル・訴訟支援
JITCO多言語対応電話・メール技能実習全般の相談

相談する際は、雇用契約書、給与明細、タイムカードの写しなどの証拠を事前に準備しておくと、スムーズに対応を受けられます。雇用契約書の確認ポイントについても事前に把握しておくことをおすすめします。

技能実習生が直面する問題と対処法

2024年の米国国務省人身売買報告書でも指摘されているように、技能実習制度にはまだ多くの課題が残されています。2022年には9,006人の技能実習生が失踪しており、搾取的な労働環境から逃れるためのケースも含まれています。

よくある問題と具体的な対処法

賃金未払い・不当控除の場合

  • まず監理団体に相談し、改善を求める
  • 改善されない場合は最寄りの労働基準監督署に申告
  • 給与明細やタイムカードを証拠として保管しておく
  • 不当解雇への対処法も合わせて確認

パワハラ・セクハラを受けた場合

  • OTITの母国語相談窓口に連絡(匿名可)
  • 日時・場所・内容を記録しておく
  • 同僚など目撃者がいれば協力を依頼

残業に関する問題

  • 36協定の範囲を超える残業は違法
  • 残業代が正しく支払われているか確認(割増率25%以上)
  • タイムカードと給与明細を照合して確認

パスポート・在留カードの取り上げ

  • これは明確な法律違反であり、技能実習法で禁止されています
  • すぐにOTITまたは警察に通報してください
  • パスポートは本人が管理する権利があります

育成就労制度への移行と権利保護の強化

2024年6月14日、技能実習制度を廃止し「育成就労制度」へ移行する法律が国会で可決成立しました。2027年4月1日に施行予定で、1993年に創設された技能実習制度は廃止されます。

育成就労制度で強化される権利保護

新制度では、技能実習生の権利保護が以下の点で大幅に強化されます。

  1. 転籍(転職)の自由化: 育成就労制度では1〜2年で本人の意向による転籍(転職)が可能になります。現行の技能実習制度では原則として転籍が認められていませんでしたが、大きな改善です。
  1. やむを得ない転籍の範囲拡大: 人権侵害などの法令違反だけでなく、労働条件について契約時の内容と実態の間に一定の相違がある場合にも転籍が認められるようになります。
  1. 特定技能へのスムーズな移行: 育成就労制度の修了後、特定技能ビザへスムーズに移行できる仕組みが整備されます。
  1. 監理支援機関の厳格化: 現行の監理団体に代わる「監理支援機関」は、より厳しい基準で許可・監督が行われます。

これらの改正は、外国人労働者の法的権利と保護制度全体の強化につながるものとして期待されています。

権利を守るために技能実習生が今すぐできること

自分の権利を守るためには、日頃からの準備が大切です。以下のチェックリストを参考に、定期的に自分の状況を確認しましょう。

権利保護のためのチェックリスト

  • ✅ 雇用契約書の写しを自分で保管しているか
  • ✅ 毎月の給与明細を保管し、最低賃金を下回っていないか確認しているか
  • ✅ パスポートと在留カードを自分で管理しているか
  • ✅ OTITの相談窓口の電話番号を知っているか
  • ✅ 監理団体の相談窓口の連絡先を把握しているか
  • 労災保険の申請方法を理解しているか
  • ✅ 残業時間と残業代が正しく計算されているか確認しているか

困ったことがあれば、一人で悩まず、必ず相談窓口に連絡してください。通報や相談をしたことを理由に不利益な取扱いを受けることは、法律で禁止されています。

まとめ

外国人技能実習生は、日本の労働法によって手厚く保護されており、OTITや監理団体、各種相談窓口など複数の保護体制が整備されています。2027年には育成就労制度への移行により、転籍の自由化など権利保護がさらに強化される予定です。

大切なのは、自分の権利を正しく理解し、問題が起きた際に適切な窓口に相談することです。言語の壁があっても、母国語で対応してくれる窓口は数多く存在します。この記事で紹介した情報を活用し、安心して日本での技能実習に取り組んでください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、J*(日本企業)・A*(外資系企業)で11年の実務経験。外国人の日本就労情報を発信。

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