労災(労働災害)の申請方法と補償内容

日本で働く外国人労働者のための労災(労働災害)申請完全ガイド。労災保険の補償内容、申請手続きの流れ、必要書類一覧、外国人ならではの注意点をわかりやすく解説。国籍に関係なくすべての労働者が対象となる制度を理解しましょう。
労災(労働災害)の申請方法と補償内容|外国人労働者のための完全ガイド
日本で働く外国人労働者にとって、仕事中のケガや病気は大きな不安要素です。しかし、労災保険(労働者災害補償保険)は国籍に関係なく、すべての労働者に適用されることをご存知でしょうか。正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣社員であっても対象となります。
この記事では、労働法の基本知識を踏まえながら、労災の申請方法・補償内容・注意点を外国人労働者向けにわかりやすく解説します。万が一の事態に備えて、しっかり理解しておきましょう。
労災保険とは?基本的な仕組みを理解しよう
労災保険とは、業務中や通勤中に発生したケガ・病気・死亡に対して補償を行う国の保険制度です。労働者を1人でも雇用するすべての企業に加入が義務付けられており、保険料は全額事業主が負担します。つまり、労働者自身が保険料を支払う必要はありません。
労災保険の対象となるケースは大きく2つに分かれます。
- 業務災害: 仕事中に起きたケガや病気(例:工場で機械に手を挟まれた、長時間労働による過労で倒れた)
- 通勤災害: 通勤途中に起きたケガや病気(例:自宅から職場への移動中に交通事故に遭った)
重要なポイントとして、外国人労働者であっても日本人労働者とまったく同じ補償を受ける権利があります。在留資格の種類に関係なく適用され、万が一不法就労の状態であっても、労災保険の給付は受けられると厚生労働省が明確にしています。
労災保険の補償内容一覧|どんな給付が受けられる?
労災保険には複数の給付があり、それぞれ業務災害と通勤災害で名称が異なります。以下の表で主な補償内容を確認しましょう。
| 給付の種類 | 業務災害の名称 | 通勤災害の名称 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 治療費 | 療養補償給付 | 療養給付 | 治療にかかる費用を全額補償 |
| 休業中の給与 | 休業補償給付 | 休業給付 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20% |
| 障害が残った場合 | 障害補償給付 | 障害給付 | 障害等級に応じた年金または一時金 |
| 死亡した場合 | 遺族補償給付 | 遺族給付 | 遺族への年金または一時金 |
| 介護が必要な場合 | 介護補償給付 | 介護給付 | 介護にかかる費用を補償 |
| 葬祭費 | 葬祭料 | 葬祭給付 | 葬祭にかかる費用を補償 |
特に多く利用されるのが療養補償給付と休業補償給付です。療養補償給付では、労災指定病院で治療を受ければ窓口負担がゼロになります。休業補償給付は休業4日目から支給され、給付基礎日額の約80%(60%+特別支給金20%)を受け取ることができます。
給料・年収に関する詳しい情報と合わせて、自分の給付基礎日額を把握しておくことが大切です。
労災申請の具体的な手続き|ステップバイステップで解説
労災が発生した場合、以下の手順で申請を進めます。
ステップ1:事故の報告と医療機関への受診
まずすぐに上司や会社に事故を報告してください。報告が遅れると申請手続きに影響が出る可能性があります。治療は可能な限り労災指定病院を利用しましょう。労災指定病院であれば、窓口での自己負担なしで治療が受けられます。
労災指定病院以外で治療を受けた場合は、一旦自分で医療費を支払い、後から労災保険に請求する形になります。
ステップ2:請求書類の作成
必要な書類を準備します。給付の種類によって使用する様式が異なります。
- 療養補償給付: 様式第5号(労災指定病院)または様式第7号(それ以外の病院)
- 休業補償給付: 様式第8号
- 障害補償給付: 様式第10号
請求書は労働基準監督署の窓口で入手できるほか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることも可能です。
ステップ3:書類の提出
記入した請求書を労働基準監督署に提出します。ただし、労災指定病院での療養補償給付の場合は病院に提出します。書類には事業主の証明欄がありますが、会社が証明を拒否した場合でも、その理由を記載すれば申請自体は可能です。
ステップ4:労働基準監督署の調査・決定
提出後、労働基準監督署が事実関係を調査し、労災認定の可否を判断します。認定されれば給付金が支給されます。
外国人労働者が知っておくべき注意点
外国人労働者ならではの注意点がいくつかあります。
言語サポートを活用する
日本語が十分でない場合、書類の記入や手続きが難しいと感じることがあるでしょう。以下のサポートを活用してください。
- 外国人労働者向け相談窓口: 各都道府県の労働局に設置されている多言語対応の相談窓口
- 通訳サービス: 労働基準監督署では通訳の手配をしてもらえる場合があります
- 多言語パンフレット: 厚生労働省が英語・中国語・ベトナム語などで労災に関する資料を提供しています
日本語スキルに不安がある方は、同僚や友人、地域の国際交流センターに相談することも有効です。
帰国する場合の給付制限
労災保険の給付を受けている途中で母国に帰国する場合、年金形式の給付(障害補償年金・遺族補償年金など)は受けられなくなる可能性があります。一方、一時金形式の給付は帰国前に受け取ることができます。帰国を検討している場合は、事前に労働基準監督署に確認しましょう。
会社が労災を認めない場合の対処法
残念ながら、一部の企業では「労災を使いたくない」として申請に協力しないケースがあります。しかし、労災の申請は労働者の権利であり、会社の許可は不要です。会社が事業主証明を拒否しても、その旨を書類に記載すれば申請できます。
困った場合は、最寄りの労働基準監督署に直接相談してください。また、弁護士や労働相談窓口に相談するのも一つの方法です。
労災の認定基準|どのようなケースが認定される?
労災として認定されるためには、以下の要件を満たす必要があります。
業務災害の認定基準
- 業務遂行性: 事業主の支配・管理下にある状態で発生したこと
- 業務起因性: ケガや病気が業務に起因していること
例えば、工場で作業中に機械でケガをした場合は明確に業務災害です。一方、休憩中に個人的な喧嘩でケガをした場合は、通常は業務災害と認められません。
近年では、過労死やメンタルヘルスの問題(長時間労働によるうつ病など)も労災として認定されるケースが増えています。日本のビジネス文化では長時間労働が問題視されており、月80時間以上の時間外労働がある場合は「過労死ライン」とされています。
通勤災害の認定基準
通勤災害として認められるのは、合理的な経路・方法で通勤している最中のケガです。帰宅途中にスーパーに立ち寄る程度の寄り道は認められますが、大幅に経路を外れた場合は通勤災害と認められない可能性があります。
労災申請に必要な書類と入手方法
申請に必要な書類を整理しておきましょう。
| 書類名 | 様式番号 | 用途 | 入手先 |
|---|---|---|---|
| 療養補償給付たる療養の給付請求書 | 様式第5号 | 労災指定病院での治療費 | 労基署・厚労省HP |
| 療養補償給付たる療養の費用請求書 | 様式第7号 | 指定外病院での治療費 | 労基署・厚労省HP |
| 休業補償給付支給請求書 | 様式第8号 | 休業中の給与補償 | 労基署・厚労省HP |
| 障害補償給付支給請求書 | 様式第10号 | 障害が残った場合 | 労基署・厚労省HP |
| 遺族補償年金支給請求書 | 様式第12号 | 死亡した場合の遺族給付 | 労基署・厚労省HP |
書類の記入に不安がある場合は、労働基準監督署の窓口で記入方法を教えてもらえます。また、外国人労働者向けの多言語ガイドも参考になります。
労災と健康保険の違い|間違えると大変!
仕事中のケガや病気で健康保険を使ってしまうケースが時々ありますが、これは正しい手続きではありません。
- 労災の場合: 労災保険を使う → 自己負担ゼロ
- プライベートのケガ・病気: 健康保険を使う → 自己負担3割
仕事中のケガで誤って健康保険を使った場合は、後から労災保険に切り替える手続きが必要です。この手続きは煩雑なため、最初から正しく労災として申請することが重要です。
税金・社会保険制度についても理解しておくと、労災保険と健康保険の違いがより明確になります。
よくある質問(FAQ)
Q: アルバイトでも労災保険は使えますか? A: はい、雇用形態に関係なくすべての労働者が対象です。アルバイト、パート、派遣社員も含まれます。
Q: 在留資格がない場合も労災保険は適用されますか? A: はい、不法就労の状態であっても労災保険の給付は受けられます。入管への通報を恐れて申請しない方もいますが、労災申請は労働者の権利です。
Q: 労災の時効はありますか? A: はい、給付の種類によって時効が異なります。療養補償給付・休業補償給付は2年、障害補償給付・遺族補償給付は5年です。
Q: 会社が労災隠しをしている場合はどうすればいいですか? A: 労災隠しは違法行為です。労働基準監督署に直接相談してください。匿名での相談も可能です。
まとめ|労災は外国人労働者の大切な権利
労災保険はすべての労働者を守る重要な制度であり、外国人労働者も例外なく保護されます。仕事中や通勤中にケガをした場合は、迷わず労災保険を申請してください。
申請のポイントをまとめると:
- すぐに会社に報告し、労災指定病院で治療を受ける
- 必要な請求書を作成し、労働基準監督署に提出する
- 言語に不安がある場合は多言語サポートを活用する
- 会社が協力しない場合も自分で申請可能
日本で安心して働くためには、労働法の知識や社会保険の仕組みを理解しておくことが大切です。万が一のときに慌てないよう、この記事の内容を参考に事前に準備しておきましょう。
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