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労働法・職場の権利ガイド【外国人向け】

雇い止めと派遣切りへの対策と権利

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年2月25日更新日:2026年2月28日
雇い止めと派遣切りへの対策と権利

雇い止めと派遣切りの違い、雇い止め法理による保護、3年ルール、無期転換ルール、対処法を詳しく解説。外国人労働者が知っておくべき法的権利と相談窓口を紹介します。労働契約法第19条の適用条件や具体的な対応ステップも網羅。

雇い止めと派遣切りへの対策と権利【外国人労働者が知るべき法的保護】

日本で働く外国人労働者にとって、有期雇用契約の「雇い止め」や派遣社員の「派遣切り」は深刻な問題です。突然契約を更新しないと言われた場合、どのような権利があり、どのように対処すべきでしょうか。本記事では、雇い止めと派遣切りの違い、法的な保護制度、具体的な対処法を詳しく解説します。外国人労働者であっても日本の労働法は平等に適用されるため、正しい知識を身につけて自分の権利を守りましょう。

雇い止めと派遣切りの違いを理解する

「雇い止め」と「派遣切り」は混同されやすい概念ですが、法的には異なるものです。それぞれの定義と特徴を正しく理解することが、適切な対応の第一歩です。

雇い止め(やといどめ) とは、有期労働契約(契約社員、パート、アルバイトなど)の期間満了時に、使用者が契約を更新せずに終了させることを指します。有期契約はそもそも期間の定めがあるため、期間満了で終了するのが原則ですが、労働契約法第19条により一定の条件下では雇い止めが無効となる場合があります。

派遣切り(はけんぎり) とは、派遣先企業が派遣元(人材派遣会社)との労働者派遣契約を打ち切ることです。これにより派遣社員は職場を失い、さらに派遣元からも雇用契約を終了されるケースが多く見られます。2008年のリーマンショック時には、厚生労働省の推計で約13万1千人、業界団体推計では約40万人)が派遣切りの影響を受けました。

比較項目雇い止め派遣切り
対象者契約社員・パート・アルバイト派遣社員
雇用関係直接雇用(企業と労働者)間接雇用(派遣元→派遣先)
契約終了の主体雇用主が契約を更新しない派遣先が派遣契約を打ち切る
適用法律労働契約法第19条労働者派遣法・労働契約法
事前通知30日前予告(条件あり)30日前予告が原則
無期転換権5年超で無期転換申込可能派遣元との雇用契約による

雇い止めが無効になるケース【雇い止め法理】

すべての雇い止めが認められるわけではありません。労働契約法第19条に定められた「雇い止め法理」により、以下のいずれかの条件に該当する場合、雇い止めは無効となる可能性があります。

無効になる可能性が高いケース:

  1. 実質的に無期雇用と同視できる場合 — 契約が何度も繰り返し更新され、長期間勤務してきた場合。更新手続きが形式的であったり、自動更新のような運用がされていた場合は特に該当しやすくなります。
  1. 更新への合理的期待がある場合 — 会社側が「契約はずっと更新するから安心して」といった発言をしていた場合や、過去に一度も更新を拒否されたことがなく、更新されることが当然だと期待できる合理的な理由がある場合です。
  1. 解雇と同様の社会通念上の相当性がない場合 — 雇い止めの理由に客観的合理性がなく、社会通念上も相当とは認められない場合、無効と判断されます。

2024年4月からの新ルールとして、雇用契約の更新時に更新上限の有無や無期転換申込機会について明示することが義務化されました。これにより、労働者は自分の契約がどのような条件で更新されるかをより明確に把握できるようになっています。

派遣社員を守る「3年ルール」と同一労働同一賃金

派遣社員には特有の保護制度があります。正しく理解して活用しましょう。

派遣の3年ルール

派遣社員が同じ事業所の同じ部署で働ける期間は原則3年が上限です。3年を超える場合、派遣先企業は以下のいずれかの対応をとる必要があります。

  • 派遣社員を直接雇用(正社員・契約社員)する
  • 別の部署に異動させて継続させる
  • 派遣元が無期雇用派遣として雇用する

ただし、派遣元に無期雇用されている派遣社員や、60歳以上の派遣社員などは3年ルールの対象外となります。

同一労働同一賃金

2020年4月から施行された同一労働同一賃金制度により、派遣労働者にも正規労働者と同等の待遇が求められるようになりました。派遣会社は「均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかを選択して、派遣社員の待遇を決定しなければなりません。

外国人労働者も日本人と同等の待遇を受ける権利があります。国籍を理由とした差別的な待遇は差別禁止法によって禁止されています。

雇い止め・派遣切りに遭った場合の対処法

万が一、雇い止めや派遣切りに直面した場合、以下のステップで対処しましょう。

ステップ1:証拠を集める

最も重要なのは証拠の保全です。以下の書類を必ず保管してください。

  • 雇用契約書(過去のものも含めすべて)
  • 給与明細
  • 更新に関するやりとり(メール、メッセージ、メモなど)
  • 雇い止め通知書・理由証明書
  • 就業規則のコピー

会社から「退職届」や「合意書」へのサインを求められても、安易に応じてはいけません。署名すると、自ら退職したことになり、後から争うことが極めて困難になります。

ステップ2:会社に異議を申し立てる

契約の更新を希望する旨を書面で会社に伝えましょう。口頭だけでなく、内容証明郵便やメールなど記録に残る方法で行うことが重要です。

ステップ3:相談窓口に相談する

一人で抱え込まず、労働相談窓口に相談しましょう。外国人労働者向けの多言語対応の相談窓口もあります。

  • 労働基準監督署 — 無料で相談できる公的機関
  • 外国人労働者向け相談ダイヤル(0570-064-110)— 多言語対応
  • 法テラス — 無料の法律相談(通訳対応あり)
  • NPO法人 — 外国人労働者支援団体

ステップ4:法的手段を検討する

話し合いで解決しない場合は、労働審判や裁判による解決を検討しましょう。

解決手段期間費用特徴
労働局のあっせん1〜2ヶ月無料行政が仲介。強制力なし
労働審判約3ヶ月数千円〜裁判所での手続き。3回以内で結審
民事訴訟6ヶ月〜数年弁護士費用要正式な裁判。判決に強制力あり

無期転換ルールを活用しよう

有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は使用者に対して無期労働契約への転換を申し込むことができます(労働契約法第18条)。これを「無期転換ルール」と呼びます。

無期転換の条件:

  • 同じ使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えること
  • 契約の間に6ヶ月以上の空白期間(クーリング期間)がないこと
  • 労働者が使用者に無期転換の申込みをすること

申込みをすれば、使用者は拒否することができません。次の契約期間から無期労働契約に転換されます。外国人労働者もこのルールを活用できるため、自分の契約更新回数と通算期間を必ず確認しましょう。

注意すべき点として、雇用契約書の内容に「更新上限」が設けられていないか確認することが重要です。2024年4月の法改正により、更新上限の設定について事前に明示することが義務化されました。

外国人労働者が特に注意すべきポイント

外国人労働者は、雇い止めや派遣切りに際して追加的なリスクに直面する可能性があります。

在留資格への影響

雇い止めや派遣切りにより失業した場合、在留資格への影響が心配されます。「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザの場合、失業後も在留期間中は日本に滞在できますが、3ヶ月以上正当な理由なく就労活動を行わない場合、在留資格が取り消される可能性があります。

失業した場合は速やかにハローワークに届け出て、求職活動を始めることが重要です。求職活動を行っていれば「正当な理由」として認められやすくなります。

技能実習生の場合

技能実習生は、雇い止めや実習先の倒産などの場合、別の実習先への移籍が認められる場合があります。外国人技能実習機構(OTIT)に相談しましょう。

言語の壁を乗り越える

日本語が十分でない場合でも、諦める必要はありません。以下の多言語対応サービスを活用してください。

  • 外国人労働者向け相談ダイヤル — 英語・中国語・ポルトガル語など対応
  • 法テラス — 通訳付きの法律相談が可能
  • 各地域の国際交流協会 — 無料の相談・通訳サービス

雇い止め・派遣切りを未然に防ぐために

問題が起きてからの対処だけでなく、事前の予防も重要です。

  1. 雇用契約書を必ず確認する — 契約期間、更新条件、更新上限の有無を必ず確認。不明な点は署名前に質問しましょう。雇用契約書の確認ポイントも参考にしてください。
  1. 更新のたびに記録を残す — 何回目の更新か、どのような手続きで更新されたかを記録しておくと、後から雇い止めの合理性を争う際に有力な証拠となります。
  1. スキルアップを続ける資格取得やスキルアップを積極的に行い、会社にとって必要な人材であり続けることが最大の予防策です。
  1. 労働組合に加入する労働組合に加入していれば、団体交渉を通じて雇い止めに対抗できる可能性が高まります。外国人でも加入できるユニオン(地域労組)もあります。
  1. ブラック企業を見極める — 入社前にその会社の評判や口コミを確認し、不当な雇い止めが多い企業を避けましょう。

まとめ:自分の権利を知り、積極的に行動しよう

雇い止めと派遣切りは、外国人労働者にとって深刻な問題ですが、日本の労働法はすべての労働者を平等に保護しています。雇い止め法理、3年ルール、無期転換ルールなどの法的保護を正しく理解し、万が一の際には適切に対処できるよう準備しておきましょう。

最も大切なのは、一人で悩まないことです。労働相談窓口は多言語で対応しており、外国人労働者の相談にも親身に対応してくれます。困ったときは早めに相談し、自分の権利を守る行動を起こしましょう。

また、退職時の権利と手続き労災の申請方法についても事前に知識を備えておくと、いざという時に慌てずに済みます。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、J*(日本企業)・A*(外資系企業)で11年の実務経験。外国人の日本就労情報を発信。

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