労働組合と団体交渉の権利を知る

日本で働く外国人労働者向けに、労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)の内容と意味を解説。労働組合の種類と加入方法、団体交渉の具体的な進め方、不当労働行為への対処法、多言語対応の相談窓口情報まで網羅した完全ガイドです。組合費の目安や外国人向けユニオンの紹介も掲載。
労働組合と団体交渉の権利を知る|外国人労働者のための完全ガイド
日本で働く外国人労働者にとって、職場での問題を解決するためには自分の権利を正しく理解することが不可欠です。日本国憲法第28条は、国籍に関係なくすべての労働者に「労働三権」を保障しています。2024年10月時点で日本の外国人労働者数は230万人を超え、労働組合への関心も年々高まっています。この記事では、外国人労働者が知っておくべき労働組合と団体交渉の権利について、加入方法から実際の交渉の流れまで詳しく解説します。
労働三権とは?外国人にも保障される基本的権利
日本国憲法第28条で保障されている労働三権は、日本で働くすべての労働者に適用されます。在留資格や国籍に関係なく、外国人労働者にも同等の権利が認められています。
労働三権は以下の3つの権利で構成されています。
| 権利 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 団結権 | 労働者が労働組合を結成・加入する権利 | 職場の仲間と組合を作る、既存の組合に加入する |
| 団体交渉権 | 労働組合が使用者と交渉する権利 | 賃金引き上げ、労働条件の改善を会社と話し合う |
| 団体行動権(争議権) | 要求実現のために団体で行動する権利 | ストライキ、ピケッティングなどの正当な争議行為 |
これらの権利は労働組合法によって具体的に保護されています。使用者がこれらの権利を侵害した場合、「不当労働行為」として法的に禁止されます。
労働組合の種類と外国人向けユニオンの紹介
日本には主に3つのタイプの労働組合があります。外国人労働者にとって特に利用しやすいのが「個人加盟ユニオン」です。
企業別組合
日本で最も一般的な労働組合の形態で、同じ会社の従業員で構成されます。大企業に多く、正社員を中心に組織されているため、外国人の非正規労働者にとってはハードルが高い場合があります。
産業別組合
同じ業界の労働者が集まって構成される組合です。連合(日本労働組合総連合会)などの大きな組織が代表的です。
個人加盟ユニオン(合同労組)
会社や業界に関係なく、一人からでも加入できる労働組合です。外国人労働者にとって最もアクセスしやすく、以下のような組織が活動しています。
- 外国人労働組合(GU):外国人労働者やその家族のために設立された組合で、多言語での相談に対応しています
- 首都圏移住労働者ユニオン(LUM):外国人や日系人、技能実習生のための個人加盟組合で、労働条件改善と権利擁護を目指しています
- 東ゼン労組(Tozen Union):英語対応が充実しており、外国語指導助手(ALT)などの外国人教師の組合活動で知られています
労働組合への加入方法と費用の目安
労働組合への加入は比較的簡単です。以下のステップで進められます。
加入の流れ
- 組合を探す:職場に既存の組合がある場合はその組合に連絡します。ない場合は個人加盟ユニオンを探しましょう
- 相談する:まずは電話やメールで相談します。多くのユニオンが多言語対応の相談窓口を設けています
- 加入申込書を提出する:必要書類を記入して提出します
- 組合費を支払う:定期的に組合費を納めます
組合費の目安
| 組合タイプ | 月額費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 企業別組合 | 月収の1〜2% | 給与天引きが一般的 |
| 個人加盟ユニオン | 1,000〜3,000円 | 固定額が多い |
| 外国人向けユニオン | 1,000〜2,000円 | 低額に設定されている場合が多い |
加入時の注意点
組合加入は労働者の正当な権利ですが、以下の点に注意しましょう。
- 会社に組合加入を知らせるタイミングは慎重に考えましょう。準備が整うまでは伝えない方が安全です
- 組合活動を理由とした不利益取扱い(解雇、降格、減給など)は法律で禁止されています
- 労働者が2人以上集まれば行政の認可なしに新しい組合を結成することもできます
団体交渉の進め方と使用者の義務
団体交渉とは、労働組合が使用者(会社)と労働条件などについて話し合うことです。使用者には団体交渉に応じる義務があり、正当な理由なく拒否することは不当労働行為に該当します。
団体交渉で話し合える内容
- 賃金・待遇:給与額、賞与、各種手当の改善
- 労働時間:残業時間の削減、休日・有給休暇の取得
- 雇用条件:雇用契約の内容、配置転換、解雇の撤回
- 職場環境:ハラスメントの改善、安全衛生の確保
- その他:社宅、食事、通勤手当など福利厚生全般
団体交渉の流れ
- 交渉の申し入れ:組合が書面で会社に団体交渉を申し入れます
- 日時・場所の調整:双方が合意できる日時と場所を決めます
- 交渉の実施:組合側と会社側がテーブルにつき、議題について話し合います
- 合意の成立:交渉が成立すれば労働協約として文書化されます
- 不調の場合:合意に至らない場合は、労働委員会へのあっせん申請や争議行為を検討します
外国人労働者と団体交渉の特別な配慮
外国人労働者が団体交渉に参加する場合、言語の問題が生じることがあります。重要なポイントとして、使用者は交渉言語について柔軟に対応する必要があり、日本語のみでの交渉を一方的に求めることは適切ではありません。通訳を用意するなど、実質的な交渉が行われるよう配慮が必要です。
不当労働行為とは?違法となるケース一覧
使用者による以下の行為は不当労働行為として労働組合法で禁止されています。外国人労働者が特に注意すべきケースも含まれます。
| 不当労働行為の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 不利益取扱い | 組合加入・活動を理由とした解雇、降格、減給、配置転換 |
| 団交拒否 | 正当な理由のない団体交渉の拒否、不誠実な交渉態度 |
| 支配介入 | 組合の結成・運営への干渉、御用組合の育成 |
| 経費援助 | 組合運営費の使用者による負担(独立性の侵害) |
| 報復的不利益取扱い | 労働委員会への申立てを理由とした不利益取扱い |
不当労働行為を受けた場合は、都道府県の労働委員会に救済を申し立てることができます。申立ては外国人労働者でも行うことができ、費用はかかりません。
外国人が利用できる多言語対応の相談窓口
労働問題で困ったとき、外国人労働者が利用できる相談窓口は数多くあります。
公的機関の相談窓口
- 外国人労働者向け相談ダイヤル(厚生労働省):英語、中国語、ベトナム語、タガログ語など12言語以上に対応
- 労働基準監督署:労働基準法違反の申告や相談ができます
- 都道府県労働委員会:不当労働行為の救済申立てや労使紛争のあっせん
- 法テラス(日本司法支援センター):法的トラブルの無料相談(通訳あり)
民間の支援団体
- 外国人労働組合(GU):多言語での労働相談会を定期開催
- 首都圏移住労働者ユニオン(LUM):外国人技能実習生の権利保護に注力
- NPO法人等の支援団体:地域ごとに外国人支援のNPOが活動しています
労働組合に加入するメリットとデメリット
メリット
- 交渉力の向上:個人では難しい交渉も、組合を通じて対等に行えます
- 法的保護の強化:組合活動は法律で手厚く保護されています
- 情報とサポート:労働法や権利に関する情報提供や相談支援が受けられます
- 不当な扱いの防止:会社が不当な行為をしにくくなる抑止力があります
- 仲間とのつながり:同じ立場の外国人労働者とのネットワークができます
デメリット
- 組合費の負担:月額1,000〜3,000円程度ですが、定期的な費用が発生します
- 時間的負担:組合活動(会議、交渉など)に時間を割く必要があります
- 会社との関係:組合活動により、会社との関係が緊張する可能性があります(ただし、不利益取扱いは違法です)
まとめ:自分の権利を知り、積極的に活用しよう
日本で働く外国人労働者は、日本人と同等の労働三権を持っています。賃金未払い、不当解雇、ハラスメント、労働災害など、職場で問題が発生した場合は、一人で抱え込まず労働組合やユニオンに相談することをおすすめします。
2024年には技能実習制度が廃止され、新たな育成就労制度への移行が決まるなど、外国人労働者の権利保護は日本社会の重要な課題です。労働組合は、外国人労働者が自分の権利を守り、より良い労働環境を実現するための強力なツールです。
まずは最寄りの相談窓口やユニオンに気軽に連絡してみましょう。あなたの権利を知ることが、より良い働き方への第一歩です。
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