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労働法・職場の権利ガイド【外国人向け】

労働審判と裁判の流れ【トラブル解決】

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年2月25日更新日:2026年2月28日
労働審判と裁判の流れ【トラブル解決】

日本で働く外国人労働者向けに、労働審判と裁判の手続きの流れを詳しく解説。不当解雇・未払い残業代などのトラブル解決方法、費用、必要書類、外国人特有の注意点まで網羅的にまとめています。労働審判の申立てから解決までの全ステップがわかります。

労働審判と裁判の流れ【トラブル解決】外国人労働者が知るべき手続きガイド

日本で働く外国人労働者にとって、職場でのトラブルは大きな不安の原因となります。不当解雇や未払い残業代、ハラスメントなどの問題が発生した場合、どのように解決すればよいのでしょうか。日本には労働審判制度という、迅速かつ効果的に労働紛争を解決できる仕組みがあります。

この記事では、労働審判と裁判の流れを外国人労働者にもわかりやすく解説します。トラブル発生から解決までの各ステップ、費用、必要書類、そして外国人特有の注意点まで網羅的に説明します。日本の労働法や権利についてをまず理解しておくことも重要です。

労働審判とは?制度の基本をわかりやすく解説

労働審判とは、労働者と事業主との間の労働トラブルを迅速に解決するために設けられた裁判所の手続きです。2006年に制度が開始され、現在では毎年全国で約3,500件の申し立てがされています。

労働審判の最大の特徴は、原則3回以内の期日で審理が終結する点です。裁判所の公式ページによると、平均審理期間は約82.6日で、65.5%の事件が申立てから3ヶ月以内に終了しています。通常の民事訴訟が約12ヶ月かかることと比較すると、非常にスピーディーな解決手段です。

労働審判委員会は、以下の3名で構成されます。

  • 労働審判官(裁判官)1名
  • 労働審判員(労働者側の知識を持つ者)1名
  • 労働審判員(使用者側の知識を持つ者)1名

この構成により、法律の専門知識だけでなく、労働現場の実情を踏まえた公正な判断がなされます。

労働審判で解決できるトラブルの種類

労働審判で取り扱われるトラブルは多岐にわたりますが、主に以下のケースが多くなっています。

トラブルの種類全体に占める割合具体的な事例
解雇・雇止め約45%不当解雇、契約更新拒否、整理解雇
賃金関係約39%未払い残業代、給料の未払い、退職金
ハラスメント約8%パワハラ、セクハラによる損害賠償
その他約8%配転命令、降格、労働条件の不利益変更

2023年には地方裁判所で労働訴訟4,954件労働審判3,473件が新規受理されており、労働審判は通常の訴訟とほぼ同等の規模で活用されています(Global Legal Insights参照)。

外国人労働者に多いトラブルとしては、在留資格に関連した不当解雇、言語の壁による労働条件の誤解、文化的な違いによるハラスメントなどが挙げられます。日本のビジネスマナーや文化について知っておくことで、一部のトラブルは予防できるでしょう。

労働審判の手続きの流れ|7つのステップ

労働審判の手続きは、申し立てから解決まで以下のステップで進みます。

ステップ1:相談・準備

まず、労働トラブルが発生したら、以下の窓口に相談しましょう。

  • 労働基準監督署:無料で相談可能
  • 法テラス:弁護士費用の立替制度あり(外国語対応あり)
  • 外国人労働者向け相談窓口:多言語対応

証拠の収集も重要です。雇用契約書、給与明細、タイムカード、メールのやり取りなど、トラブルに関連する資料をできるだけ多く保管してください。

ステップ2:申立書の作成・提出

申立書を作成し、管轄の地方裁判所に提出します。申立書には以下の内容を記載します。

  • 当事者の情報(労働者・会社の名称、住所)
  • 紛争の内容と経緯
  • 求める解決内容(例:未払い残業代〇〇万円の支払い)

ステップ3:第1回期日の指定

申立てから40日以内に第1回期日が指定されます。この期間に、相手方(会社側)は答弁書を提出する必要があります。

ステップ4:期日における審理(最大3回)

労働審判委員会が双方の主張を聞き、証拠を確認します。各期日は通常2〜3時間程度です。委員会は事実関係を明らかにし、適切な解決方法を探ります。

ステップ5:調停の試み

審理の過程で、労働審判委員会は調停(話し合いによる解決)を試みます。調停が成立すれば、裁判上の和解と同じ効力を持ちます。約80%の事件が調停や審判で解決されています。

ステップ6:労働審判の言い渡し

調停が成立しない場合、労働審判委員会が審判(判断)を下します。この審判に対して2週間以内に異議申し立てが可能です。

ステップ7:異議申し立て・訴訟への移行

異議が申し立てられた場合、自動的に通常の訴訟手続きに移行します。労働審判から訴訟への移行については、事前に弁護士と相談しておくことをおすすめします。

労働審判にかかる費用と解決金の相場

労働審判の費用は、通常の訴訟と比較して低額で済むことが多いです。

費用項目金額の目安備考
申立手数料(印紙代)数千円〜数万円請求金額により変動
予納郵便切手約2,000〜3,000円裁判所により異なる
弁護士費用(着手金)20万〜40万円法テラスの立替制度あり
弁護士費用(成功報酬)回収額の10〜20%結果に応じて変動

解決金の相場は、解雇事件の場合で月給の3〜6ヶ月分が一般的です。未払い残業代の場合は、実際の未払い額に加えて付加金(最大同額)が認められることもあります。

経済的に余裕がない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の弁護士費用立替制度を利用できます。外国人労働者も条件を満たせば利用可能です。税金や社会保険についても理解しておくと、労働条件の交渉に役立ちます。

外国人労働者が労働審判を利用する際の注意点

外国人労働者が労働審判を利用する際には、いくつか特有の注意点があります。

言語の問題

労働審判の手続きはすべて日本語で行われます。外国語の書類を証拠として提出する場合は、日本語翻訳が必要です(Kojima Law Offices参照)。審理の場でも日本語でのやり取りが基本となるため、通訳の確保が重要です。

在留資格への影響

労働審判の申し立て自体が在留資格に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、解雇されて無職の状態が長引くと、在留資格の更新に影響する可能性があります。在留資格やビザの基礎知識を確認し、早めの対応を心がけましょう。

弁護士の選び方

外国人の労働問題に詳しい弁護士を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考にしてください。

  • 外国語対応可能な弁護士かどうか
  • 労働事件の実績が豊富かどうか
  • 初回相談が無料かどうか

弁護士会の外国人相談窓口や、法テラスの多言語サービスを活用するのもよいでしょう。

証拠の保全

トラブルが発生した際は、以下の証拠をすぐに保全してください。

  • 雇用契約書のコピー
  • 給与明細(全期間分)
  • タイムカードの記録
  • 上司や同僚とのメール・メッセージ
  • パワハラなどの音声録音や写真

通常訴訟と労働審判の違い|どちらを選ぶべきか

労働審判と通常訴訟のどちらを選ぶかは、トラブルの内容や状況によって異なります。

比較項目労働審判通常訴訟
期間約2〜3ヶ月約12ヶ月以上
期日回数最大3回制限なし
費用比較的低額高額になりやすい
弁護士の必要性推奨(なくても可)強く推奨
解決方法調停・審判判決・和解
公開性非公開原則公開
控訴異議→訴訟に移行控訴・上告可能

労働審判を選ぶべきケース:

  • 早期解決を望む場合
  • 事実関係が比較的シンプルな場合
  • 金銭的な解決で合意できそうな場合

通常訴訟を選ぶべきケース:

  • 複雑な法律問題が含まれる場合
  • 判例として意義のある判断を求める場合
  • 労働審判で異議が申し立てられた場合

転職やキャリアアップを検討しながら、並行して労働トラブルの解決を進めることも選択肢のひとつです。

労働審判の解決事例と成功のポイント

実際の労働審判では、以下のようなケースで解決が図られています。

事例1:外国人エンジニアの不当解雇

IT企業で働く外国人エンジニアが、在留資格の更新手続き中に「ビザが切れるから」という理由で解雇されたケース。労働審判の結果、解雇は無効とされ、解決金として月給6ヶ月分が支払われました。IT・エンジニアとして日本で働く方にとって参考になる事例です。

事例2:飲食店の未払い残業代

レストランで働く外国人スタッフが、月80時間以上の残業をしていたにもかかわらず、残業代が一切支払われていなかったケース。労働審判で調停が成立し、過去2年分の未払い残業代約250万円が支払われました。飲食・サービス業で働く方は、自身の労働時間を正確に記録しておくことが大切です。

成功のポイント

  1. 証拠を徹底的に準備する:タイムカード、契約書、メールなどを整理
  2. 早い段階で弁護士に相談する:申立て前の準備が結果を左右する
  3. 調停に前向きに臨む:完全勝訴にこだわらず、現実的な解決を目指す
  4. 感情的にならない:事実に基づいた主張を心がける

まとめ|外国人労働者も安心してトラブル解決できる

日本の労働審判制度は、外国人労働者にとっても利用しやすい紛争解決手段です。原則3回以内の期日で審理が終結し、約80%の事件が調停や審判で解決されるため、迅速かつ効果的にトラブルを解決できます。

トラブルが発生したら、まずは落ち着いて証拠を保全し、専門家に相談しましょう。言語の壁がある場合は、多言語対応の相談窓口や外国語対応の弁護士を活用してください。

日本で安心して働くために、労働法や職場の権利を理解し、いざという時の対処法を知っておくことが大切です。給料や待遇に関する知識も、トラブル予防に役立ちます。

自分の権利を正しく理解し、必要な時には制度を活用して、日本での充実した働き方を実現しましょう。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、J*(日本企業)・A*(外資系企業)で11年の実務経験。外国人の日本就労情報を発信。

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