残業代の計算方法と知っておくべき権利

日本で働く外国人向けに残業代の計算方法を徹底解説。法定時間外・深夜・休日労働の割増率一覧表、固定残業代の注意点、計算シミュレーション、相談窓口まで。自分の残業代が正しく支払われているか確認しましょう。
残業代の計算方法と知っておくべき権利
日本で働く外国人にとって、残業代の仕組みを正しく理解することは非常に重要です。「残業したのに給料が少ない気がする」「固定残業代って何?」と疑問を感じたことはありませんか?この記事では、残業代の基本的な計算方法から、外国人労働者が知っておくべき権利まで、わかりやすく解説します。正しい知識を身につけて、自分の給料が適正かどうか確認しましょう。
残業代の基本ルール:労働基準法で定められた権利
日本の労働基準法では、労働時間と残業代について明確なルールが定められています。まず、法定労働時間は1日8時間・週40時間です。この時間を超えて働いた場合、会社は割増賃金(残業代)を支払う義務があります。
重要なポイントとして、外国人労働者にも日本人と全く同じ残業代計算ルールが適用されます。国籍による差別は法律で禁止されており、在留資格の種類に関係なく、すべての労働者は残業代を受け取る権利があります。
また、残業をさせるためには「36協定(サブロク協定)」という労使協定が必要です。36協定なしに残業させると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則があります。
残業時間の上限は以下の通りです:
- 原則:月45時間・年360時間まで
- 特別条項付き:月100時間未満・年720時間まで(臨時的な特別な事情がある場合のみ)
残業代の計算式:3ステップで簡単に計算
残業代の計算は、以下の3ステップで行います。
ステップ1:1時間あたりの基礎賃金を算出する
月給制の場合、以下の計算式で1時間あたりの賃金を求めます。
1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1ヶ月の所定労働時間
ここで注意すべきは、月給から除外できる手当があることです。労働基準法施行規則により、以下の手当は基礎賃金の計算から除外されます:
- 通勤手当
- 家族手当(扶養人数に応じて支給されるもの)
- 住宅手当(家賃額に応じて支給されるもの)
- 別居手当・単身赴任手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
逆に、役職手当・資格手当・職務手当などは基礎賃金に含めなければなりません。
ステップ2:割増率を確認する
残業の種類によって割増率が異なります。
ステップ3:計算式に当てはめる
残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間
例えば、月給25万円(所定労働時間160時間)で、10時間の時間外労働をした場合:
- 1時間あたりの賃金:250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円
- 割増率:1.25倍
- 残業代:1,562.5円 × 1.25 × 10時間 = 19,531円
割増賃金の種類と割増率一覧
残業代の割増率は、残業の種類によって異なります。以下の表で確認してください。
| 残業の種類 | 条件 | 割増率 | 計算例(時給1,500円の場合) |
|---|---|---|---|
| 法定時間外労働 | 1日8時間・週40時間を超えた場合 | 25%以上(×1.25) | 1,875円/時間 |
| 月60時間超の時間外労働 | 月の残業が60時間を超えた部分 | 50%以上(×1.50) | 2,250円/時間 |
| 深夜労働 | 22時~翌5時の労働 | 25%以上(×1.25) | 1,875円/時間 |
| 休日労働 | 法定休日(週1日)の労働 | 35%以上(×1.35) | 2,025円/時間 |
| 時間外+深夜 | 法定時間外かつ深夜の労働 | 50%以上(×1.50) | 2,250円/時間 |
| 休日+深夜 | 法定休日かつ深夜の労働 | 60%以上(×1.60) | 2,400円/時間 |
注意点: 2023年4月から、月60時間を超える時間外労働の割増率50%以上が中小企業にも適用されました。以前は大企業のみの適用でしたが、現在はすべての企業が対象です。
割増賃金の詳しいルールはこちらで確認できます。
固定残業代(みなし残業)の仕組みと注意点
外国人労働者が特に注意すべきなのが「固定残業代」(みなし残業代)の制度です。これは、あらかじめ一定時間分の残業代を毎月の給料に含めて支払う制度です。
固定残業代の仕組み
例えば「月30時間分の固定残業代を含む」と記載されている場合、30時間分の残業代が基本給に含まれています。ただし、以下の点を必ず確認してください:
- 超過分は追加で支払われる義務がある:固定残業時間を超えた分は、別途残業代が支払われなければなりません
- 基本給と固定残業代は明確に区別される必要がある:給与明細で確認しましょう
- 固定残業時間と金額が明示されている必要がある:求人票や雇用契約書に記載がなければ違法の可能性があります
固定残業代でよくあるトラブル
- 固定残業代を超えた分の残業代が支払われない
- 基本給が異常に低く設定されている(最低賃金を下回る可能性)
- 固定残業時間の上限が不当に高い(月80時間以上など)
このような場合は、労働基準監督署に相談することをお勧めします。
外国人労働者が確認すべき5つのポイント
日本で働く外国人は、以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。
1. 給与明細を毎月チェックする
給与明細の各項目の意味を理解し、残業時間と残業代が正しく計算されているか確認しましょう。特に以下の項目に注目してください:
- 時間外労働手当の金額
- 深夜労働手当の金額
- 休日労働手当の金額
- 実際の残業時間との整合性
2. 雇用契約書の内容を理解する
雇用契約書や労働条件通知書には、所定労働時間、残業に関する規定、固定残業代の有無などが記載されています。日本語がわからない場合は、翻訳ツールや母語の相談窓口を活用しましょう。
3. タイムカードや勤怠記録を保管する
残業代の未払いが発覚した場合に備えて、自分の労働時間を記録しておくことが重要です。タイムカードのコピー、メールの送信時間、出退勤の記録などを保管しましょう。
4. サービス残業は違法であることを知る
「サービス残業」(無給の残業)は日本の法律で禁止されています。上司から「残業をつけるな」と言われた場合でも、それは違法行為です。会社が残業代を支払わない場合は、労働基準監督署に相談できます。
5. 相談窓口を把握しておく
残業代に関するトラブルが発生した場合、以下の窓口に相談できます:
- 労働基準監督署:全国各地にあり、無料で相談できます
- 外国人労働者向け相談窓口:多言語対応の窓口が設置されています
- 法テラス:法的トラブルの無料相談が可能です
- 労働組合・ユニオン:個人でも加入できる組合があります
残業代に関するよくある質問(FAQ)
Q1. アルバイト・パートでも残業代はもらえますか?
はい、雇用形態に関係なく、法定労働時間を超えた場合は割増賃金が発生します。派遣社員と正社員の待遇差についても確認しておきましょう。
Q2. 管理職は残業代が出ないと聞きましたが本当ですか?
「管理監督者」に該当する場合は時間外・休日労働の割増賃金の適用除外となりますが、深夜労働の割増賃金は支払われます。ただし、「名ばかり管理職」の場合は残業代の支払い義務があります。実際の権限や待遇で判断されます。
Q3. 残業代の未払いは何年前まで請求できますか?
2020年4月以降に発生した残業代は3年間(将来的には5年間に延長予定)さかのぼって請求できます。証拠を残しておくことが重要です。
Q4. 年俸制でも残業代は発生しますか?
年俸制であっても、法定労働時間を超えた部分については残業代が発生します。月給制と年俸制の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
残業代の計算シミュレーション
実際の計算例で理解を深めましょう。
ケース1:一般的な事務職の場合
- 月給:22万円(基本給20万円+職務手当2万円)
- 所定労働時間:月160時間
- 当月の残業:法定時間外15時間+深夜3時間
計算:
- 基礎賃金:220,000円÷160時間=1,375円
- 時間外労働分:1,375円×1.25×15時間=25,781円
- 深夜労働分:1,375円×1.50×3時間=6,187円
- 合計残業代:31,968円
ケース2:工場勤務で休日出勤がある場合
- 月給:26万円
- 所定労働時間:月168時間
- 当月の残業:法定時間外20時間+休日労働8時間
計算:
- 基礎賃金:260,000円÷168時間=1,548円
- 時間外労働分:1,548円×1.25×20時間=38,700円
- 休日労働分:1,548円×1.35×8時間=16,718円
- 合計残業代:55,418円
自分の手取り額の計算方法も合わせて確認しておくと、毎月の収入をより正確に把握できます。
まとめ:自分の権利を守るために
残業代は日本の法律で保護された労働者の権利です。外国人であっても日本人と同じルールが適用され、正当な残業代を受け取ることができます。
今日からできること:
- 自分の1時間あたりの基礎賃金を計算してみる
- 毎月の給与明細で残業代が正しいか確認する
- 労働時間を自分でも記録する習慣をつける
- 不明点があれば労働基準監督署や外国人向け相談窓口に相談する
給料・年収・待遇ガイドでは、残業代以外の給与に関する情報も詳しく解説しています。また、有給休暇の権利と上手な取得方法や福利厚生の種類と確認すべきポイントもあわせて確認して、日本での労働環境をより良くしていきましょう。
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