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労災保険の補償内容と申請方法

ブイ レ クアンブイ レ クアン公開日:2026年2月25日更新日:2026年2月28日
労災保険の補償内容と申請方法

日本で働く外国人労働者向けに、労災保険の補償内容(療養・休業・障害・傷病年金・遺族補償)と申請手続きの具体的な流れを詳しく解説。外国人特有の注意点や言語サポート、よくある質問まで網羅した完全ガイドです。労災発生時にすぐ役立つ情報をまとめました。

労災保険の補償内容と申請方法【外国人労働者向け完全ガイド】

日本で働く外国人労働者にとって、労災保険(労働者災害補償保険)は非常に重要な制度です。仕事中や通勤中にケガをしたり病気になったりした場合、医療費の自己負担なしで治療を受けられ、休業中の生活も保障されます。2023年度のデータによると、外国人労働者の労災発生率は1,000人あたり2.77件と、全労働者の2.36件を上回っており、労災保険の理解がますます重要になっています。

この記事では、労災保険の補償内容から申請方法まで、外国人労働者が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

労災保険とは?基本的な仕組みを理解しよう

労災保険とは、労働者が業務上の事由または通勤によって負傷したり、病気にかかったり、障害が残ったり、死亡した場合に、労働者やその遺族に対して必要な保険給付を行う制度です。正式名称は「労働者災害補償保険」といい、厚生労働省が管轄しています。

労災保険の重要ポイント

  • 保険料は全額事業主が負担:労働者の給料から天引きされることはありません
  • 国籍に関係なく適用:外国人労働者もパート・アルバイトも含め、すべての労働者が対象です
  • 自己負担ゼロで治療可能:労災認定された場合、治療費は全額保険でカバーされます
  • 雇用保険とは別制度:雇用保険は失業時の保障ですが、労災保険は業務中・通勤中の災害に対する保障です

労災保険は、1人でも従業員を雇用している事業所は原則として加入義務があります。そのため、日本で合法的に雇用されているすべての外国人労働者は、自動的に労災保険の対象となります。

労災保険の5つの補償内容を詳しく解説

労災保険で受けられる補償は大きく5つに分類されます。それぞれの内容と給付額について詳しく見ていきましょう。

補償の種類内容給付額・条件
療養(補償)給付業務・通勤災害による傷病の治療費治療費全額(自己負担なし)
休業(補償)給付働けない期間の賃金補償給付基礎日額の60%+特別支給金20%
障害(補償)給付治療後に障害が残った場合障害等級に応じた年金または一時金
傷病(補償)年金治療開始1年6ヶ月後も治らない場合傷病等級に応じた年金
遺族(補償)給付労働者が死亡した場合遺族の人数に応じた年金または一時金

療養(補償)給付

仕事中や通勤中にケガや病気をした場合、労災指定病院で無料で治療を受けられます。労災指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん自己負担した後で請求すれば全額返還されます。治療に必要な薬剤、手術、入院、リハビリなどすべてが対象です。

休業(補償)給付

労災による傷病で仕事ができない場合、休業4日目から給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、業務災害の場合は事業主が平均賃金の60%を支払う義務があります。

障害(補償)給付

治療が終了しても障害が残った場合、障害の程度(第1級〜第14級)に応じて年金または一時金が支給されます。第1級〜第7級は年金、第8級〜第14級は一時金として支給されます。

労災保険の申請手続きの流れ【4ステップ】

労災の申請手続きは以下の4ステップで進みます。外国人労働者の方でも手順に沿って進めれば問題なく申請できます。

ステップ1:事故の報告と医療機関の受診

業務中や通勤中にケガや病気が発生したら、まず上司や会社の担当者に報告します。その後、できるだけ労災指定病院を受診してください。受診時に「労災事故である」ことを必ず医療機関に伝えましょう。

ステップ2:必要書類の準備

厚生労働省のウェブサイトから申請に必要な様式をダウンロードします。主な申請書類は以下の通りです:

  • 療養補償給付請求書(様式第5号):治療費の請求
  • 休業補償給付請求書(様式第8号):休業中の賃金補償の請求
  • 障害補償給付請求書(様式第10号):障害が残った場合の請求

ステップ3:書類の記入と提出

請求書に必要事項を記入し、事業主の証明を受けた上で、管轄の労働基準監督署に提出します。郵送でも窓口でも提出可能です。日本語の記入が難しい場合は、会社の担当者や外国人向け相談窓口に相談しましょう。

ステップ4:審査と給付決定

労働基準監督署が調査を行い、労災と認定されれば保険給付が行われます。審査には通常1〜3ヶ月程度かかります。認定結果に不服がある場合は、審査請求制度を利用できます。

外国人労働者が労災申請で注意すべきポイント

外国人労働者が労災保険を利用する際に、特に気をつけるべきポイントがあります。外国人の労災に関する問題を理解して、適切に対応しましょう。

在留資格との関係

労災保険は在留資格の種類に関係なく適用されます。技術・人文知識・国際業務で働く方はもちろん、特定技能ビザや技能実習生、さらにはアルバイトをしている留学生も対象です。万が一、不法就労の状態であっても労災保険は適用される場合があります。

言語の壁への対処

申請書類は日本語で作成する必要がありますが、外国語対応の相談窓口も増えています。以下の方法で支援を受けられます:

  • 外国人労働者向け相談ダイヤル(厚生労働省)
  • 法テラス(多言語対応の法律相談)
  • 地域の国際交流協会の相談サービス
  • 会社の人事・総務担当者への相談

よくあるトラブルと対処法

トラブル対処法
会社が労災申請に協力しない労働基準監督署に直接相談。会社の証明なしでも申請可能
「健康保険で治療して」と言われた労災は健康保険の対象外。必ず労災として申請する
通勤中の事故か不明合理的な経路・方法での通勤なら通勤災害に該当
持病の悪化業務との因果関係が認められれば労災認定される可能性あり

業務災害と通勤災害の違い

労災保険では、「業務災害」と「通勤災害」の2種類が保障対象となります。それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

業務災害とは

業務災害は、仕事中に仕事が原因で発生したケガや病気のことです。具体的には以下のケースが該当します:

  • 作業中の機械によるケガ
  • 重い荷物の運搬による腰痛
  • 工場での作業中の事故
  • 長時間労働による過労死・うつ病
  • 職場でのハラスメントによる精神疾患

通勤災害とは

通勤災害は、自宅と職場の間の合理的な経路・方法での移動中に発生した事故のことです。ただし、通勤途中に私的な目的で寄り道した場合は、寄り道部分は通勤災害として認められないことがあります。

労災保険と他の保険制度との関係

日本にはさまざまな社会保険制度がありますが、労災保険との関係を正しく理解しておくことが大切です。

健康保険との違い

健康保険は業務外の傷病に適用される保険です。仕事中や通勤中のケガ・病気は健康保険の対象外であり、必ず労災保険を使う必要があります。誤って健康保険で治療を受けた場合は、後から労災保険に切り替える手続きが必要です。

厚生年金・国民年金との関係

労災で障害が残った場合、労災保険の障害(補償)給付と厚生年金・国民年金の障害年金を同時に受給できます。ただし、労災保険の給付額が一部調整される場合があります。

雇用保険との関係

労災で休業中は、雇用保険の失業給付は受けられません。しかし、労災による傷病が治癒した後に退職した場合は、雇用保険の失業給付を申請できます。

労災保険の給付額の計算方法

労災保険の給付額は「給付基礎日額」をもとに計算されます。給付基礎日額は、原則として労災が発生した日の直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った金額です。

給付基礎日額の計算例

例えば、月給25万円の場合:

  • 直前3ヶ月の賃金総額:75万円(25万円×3ヶ月)
  • 暦日数:92日(3ヶ月分)
  • 給付基礎日額:約8,152円(75万円÷92日)

この場合の休業補償給付は:

  • 休業(補償)給付:8,152円×60%=4,891円/日
  • 休業特別支給金:8,152円×20%=1,630円/日
  • 合計:6,521円/日(賃金の約80%)

よくある質問(FAQ)

Q1:パート・アルバイトでも労災保険は使えますか?

はい、使えます。パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など、雇用形態に関係なくすべての労働者が労災保険の対象です。飲食・サービス業でアルバイトをしている外国人も同様に保護されます。

Q2:労災保険に自分で加入する必要がありますか?

いいえ、加入手続きは事業主が行います。保険料も全額事業主負担です。労働者が自分で手続きをしたり、保険料を払ったりする必要はありません。

Q3:帰国後でも労災保険の給付を受けられますか?

はい、労災保険の給付は帰国後でも受けられます。ただし、帰国前に必要な手続きを済ませておくことが重要です。帰国時の手続きと合わせて確認しましょう。

Q4:労災を申請すると会社に迷惑がかかりますか?

労災保険は労働者の正当な権利です。会社の労災保険料率に影響する場合がありますが、それは制度上の仕組みであり、労働者が遠慮する必要はありません。会社が労災申請を妨害する行為は労働法違反です。

Q5:精神的な病気(うつ病など)も労災になりますか?

業務上の強いストレス(過重労働、ハラスメントなど)が原因で精神疾患を発症した場合、労災と認定される可能性があります。認定基準は年々拡大されており、2023年に基準が改正されてカスタマーハラスメントも対象に加わりました。

まとめ:労災保険は外国人労働者の大切な権利

労災保険は、日本で働くすべての外国人労働者を守る重要な制度です。業務中や通勤中のケガ・病気に対して、治療費の全額補償、休業中の賃金保障、障害が残った場合の補償など、手厚い保護が用意されています。

重要なポイントを改めて整理すると:

  • 国籍や雇用形態に関係なく、すべての労働者が対象
  • 保険料は事業主負担で、労働者の自己負担なし
  • 申請は労働基準監督署に書類を提出して行う
  • 会社が非協力的でも、労働者自身で申請可能
  • 言語の壁がある場合は、外国人向け相談窓口を活用

万が一の労災に備えて、自分の権利をしっかり理解しておきましょう。困ったときは、最寄りの労働基準監督署や外国人労働者向けの相談窓口に遠慮なく相談してください。

所得税住民税年末調整など、日本の税金・社会保険制度全般については、税金・社会保険・年金の完全ガイドもあわせてご覧ください。

ブイ レ クアン
ブイ レ クアン

ベトナム出身、来日16年以上。名古屋大学卒業後、J*(日本企業)・A*(外資系企業)で11年の実務経験。外国人の日本就労情報を発信。

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