社会保険料の計算方法と控除の仕組み

日本で働く外国人向けに、社会保険料の計算方法・標準報酬月額の決め方・控除の仕組みをわかりやすく解説。年収別シミュレーションや脱退一時金制度、社会保障協定など外国人ならではのポイントも網羅した完全ガイドです。
社会保険料の計算方法と控除の仕組み【外国人向け完全解説】
日本で働く外国人にとって、毎月の給与から差し引かれる社会保険料は大きな関心事です。「なぜこんなに引かれるの?」「どうやって計算されているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、社会保険料の計算方法と控除の仕組みを、外国人労働者の視点からわかりやすく解説します。正しい知識を身につけることで、自分の手取り額を正確に把握し、将来の生活設計に役立てましょう。
社会保険料とは?基本的な仕組みを理解しよう
社会保険料とは、日本の社会保障制度を支えるために、労働者と事業主が負担する保険料のことです。日本で働く外国人も、原則として日本人と同じ社会保険に加入する義務があります。
社会保険料は大きく分けて以下の5種類があります:
- 健康保険料:病気やけがの際に医療費の自己負担を軽減するための保険
- 厚生年金保険料:老後の年金や障害年金のための保険
- 介護保険料:40歳以上が対象の介護サービスのための保険
- 雇用保険料:失業時の給付や再就職支援のための保険
- 労災保険料:業務中のけがや病気に対する保険(全額事業主負担)
このうち、健康保険・厚生年金・介護保険は「狭義の社会保険」と呼ばれ、雇用保険・労災保険は「労働保険」と分類されます。社会保険料控除は支払った全額が所得から控除されるため、実質的な税負担の軽減にもつながります。
社会保険制度全体について詳しく知りたい方は、税金・社会保険・年金の完全ガイドもあわせてご覧ください。
標準報酬月額とは?社会保険料計算の基礎
社会保険料の計算で最も重要なのが「標準報酬月額」という概念です。これは、毎月の給与を一定の等級に当てはめた金額で、社会保険料はこの標準報酬月額に保険料率を掛けて計算されます。
標準報酬月額の決め方
標準報酬月額は、原則として毎年4月〜6月に支払われた給与の平均額をもとに決定されます。これを「定時決定」と呼びます。
計算式:
標準報酬月額 = (4月の給与 + 5月の給与 + 6月の給与)÷ 3
ここで言う「給与」には、基本給だけでなく、以下のものも含まれます:
- 残業手当・通勤手当
- 住宅手当・家族手当
- 役職手当・資格手当
- 年4回以上支給される賞与
一方、年3回以下のボーナスは「標準賞与額」として別に計算されるため注意が必要です。
標準報酬月額の等級表
健康保険では1等級(58,000円)〜50等級(1,390,000円)まで、厚生年金保険では1等級(88,000円)〜32等級(650,000円)までの等級が設定されています。自分の給与がどの等級に該当するかは、協会けんぽの保険料額表で確認できます。
社会保険料の具体的な計算方法
それでは、各保険料の具体的な計算方法を見ていきましょう。
健康保険料の計算
健康保険料は都道府県ごとに保険料率が異なります。2025年度の協会けんぽの保険料率は以下の通りです:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 東京都の保険料率 | 9.91%(2025年度) |
| 最も低い県 | 沖縄県:9.44% |
| 最も高い県 | 佐賀県:10.78% |
| 負担割合 | 労使折半(従業員50%・事業主50%) |
計算例(東京都・標準報酬月額30万円の場合):
健康保険料 = 300,000円 × 9.91% = 29,730円 従業員負担 = 29,730円 ÷ 2 = 14,865円/月
厚生年金保険料の計算
厚生年金保険料率は全国一律18.3%で、労使折半です。
計算例(標準報酬月額30万円の場合):
厚生年金保険料 = 300,000円 × 18.3% = 54,900円 従業員負担 = 54,900円 ÷ 2 = 27,450円/月
介護保険料の計算
40歳以上65歳未満の方は介護保険料も納付します。2025年3月以降の保険料率は全国一律1.59%です。
計算例(標準報酬月額30万円・40歳以上の場合):
介護保険料 = 300,000円 × 1.59% = 4,770円 従業員負担 = 4,770円 ÷ 2 = 2,385円/月
雇用保険料の計算
雇用保険料率は業種によって異なりますが、一般の事業では従業員負担は0.6%(2024年度)です。
日本での給与や待遇について詳しく知りたい方は、給料・年収・待遇ガイドをご参照ください。
年収別の社会保険料シミュレーション
実際にどのくらいの社会保険料がかかるのか、年収別にシミュレーションしてみましょう(東京都・40歳未満・協会けんぽの場合)。
| 年収(万円) | 標準報酬月額 | 健康保険料(月) | 厚生年金(月) | 雇用保険(月) | 合計(月) | 年間合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 300 | 260,000円 | 12,883円 | 23,790円 | 1,500円 | 38,173円 | 約458,076円 |
| 400 | 340,000円 | 16,847円 | 31,110円 | 2,000円 | 49,957円 | 約599,484円 |
| 500 | 410,000円 | 20,316円 | 37,515円 | 2,500円 | 60,331円 | 約723,972円 |
| 600 | 500,000円 | 24,775円 | 45,750円 | 3,000円 | 73,525円 | 約882,300円 |
| 800 | 650,000円 | 32,208円 | 59,475円 | 4,000円 | 95,683円 | 約1,148,196円 |
この表から分かるように、年収が上がるほど社会保険料の負担も大きくなります。ただし、厚生年金には上限があり、標準報酬月額の最高等級は650,000円です。
社会保険料控除の仕組みと節税効果
社会保険料控除とは、1年間に支払った社会保険料の全額を所得から差し引ける制度です。他の所得控除と異なり、控除額に上限がないのが大きな特徴です。
控除の対象となる社会保険料
- 健康保険料・厚生年金保険料(給与天引き分)
- 国民健康保険料・国民年金保険料(自分で支払った分)
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 後期高齢者医療保険料(家族の分も対象)
社会保険料控除の申告方法
社会保険料控除を受ける方法は、給与の天引き分と自分で支払った分で異なります。
1. 給与から天引きされる分 会社員の場合、健康保険料や厚生年金保険料は毎月の給与から自動的に控除されます。年末調整で会社が処理するため、個人で申告する必要はありません。
2. 自分で支払った分 国民年金の追納や、家族の国民健康保険料を支払った場合は、年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」に記入して申告するか、確定申告で申請します。
節税効果の具体例
年収400万円の会社員が、年間約60万円の社会保険料を支払った場合:
- 所得税の軽減効果:約60,000円(税率10%の場合)
- 住民税の軽減効果:約60,000円(税率10%)
- 合計で年間約12万円の税負担軽減
外国人労働者が注意すべきポイント
外国人として日本で働く場合、社会保険料に関していくつか重要な注意点があります。
社会保障協定の活用
日本は多くの国と「社会保障協定」を結んでいます。この協定により、一定期間日本で働く場合、母国の年金制度にのみ加入し、日本の厚生年金保険料を免除されるケースがあります。対象国は、ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、フランス、中国など20カ国以上です。
脱退一時金制度
日本を離れる際に、厚生年金の加入期間が6ヶ月以上ある外国人は「脱退一時金」を請求できます。これは、日本で支払った年金保険料の一部が返還される制度です。出国後2年以内に請求する必要があるため、帰国が決まったら早めに準備しましょう。
詳しくは在留資格・ビザの基礎知識完全ガイドもご参照ください。
国民健康保険と社会保険の違い
会社を退職して転職活動をする場合や、フリーランスとして働く場合は、社会保険から国民健康保険・国民年金に切り替える必要があります。国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、退職直後は負担が大きくなることがあります。
フリーランスとして働くことを検討している方は、起業・フリーランスとして日本で働くガイドが参考になります。
社会保険料を正しく管理するためのチェックリスト
最後に、社会保険料を正しく管理するためのチェックポイントをまとめます。
- 給与明細の確認:毎月の給与明細で、各社会保険料の控除額を確認する習慣をつけましょう
- 標準報酬月額の確認:毎年9月に変更される可能性があるため、10月以降の給与明細で変更がないか確認しましょう
- 年末調整の対応:自分で支払った国民年金や家族の保険料がある場合は、必ず年末調整で申告しましょう
- 社会保障協定の確認:母国との社会保障協定があるか確認し、二重加入を避けましょう
- 脱退一時金の準備:帰国予定がある場合は、出国前に脱退一時金の請求手続きを確認しましょう
日本の労働法や職場での権利について知りたい方は、労働法・職場の権利ガイドもぜひご覧ください。
まとめ
社会保険料は毎月の給与から大きな割合を占めますが、病気・けが・老後の備えとして重要な制度です。計算方法を理解することで、自分の手取り額を正確に把握でき、生活設計にも役立ちます。
特に外国人労働者は、社会保障協定や脱退一時金制度を活用することで、保険料の負担を適切に管理できます。不明な点があれば、会社の人事部門や最寄りの年金事務所に相談することをおすすめします。
日本での働き方について総合的に知りたい方は、日本での就職活動完全ガイドもあわせてご活用ください。
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