最低賃金法と外国人への適用範囲

日本の最低賃金法は外国人労働者にも完全適用されます。2025年度の都道府県別最低賃金一覧、技能実習生・特定技能への適用ルール、違反時の罰則、賃金が低い場合の対処法まで詳しく解説。自分の権利を知り、適正な賃金を受け取りましょう。
最低賃金法と外国人への適用範囲|知っておくべき権利と注意点
日本で働く外国人労働者にとって、自分の給与が適正かどうかは大きな関心事です。「外国人だから最低賃金以下でも仕方ない」と思っていませんか?実は、最低賃金法は国籍に関係なく、日本で働く全ての労働者に適用されます。本記事では、最低賃金法の基本から外国人労働者への具体的な適用範囲、違反時の罰則、そして自分の権利を守るための実践的なポイントまで詳しく解説します。
最低賃金法とは?基本の仕組みを理解しよう
最低賃金法は、使用者が労働者に支払うべき賃金の最低額を定めた法律です。この法律により、全ての労働者が一定水準以上の賃金を受け取る権利が保障されています。
日本の最低賃金制度には、大きく分けて2つの種類があります。
地域別最低賃金は、各都道府県ごとに設定される最低賃金で、その地域で働く全ての労働者に適用されます。毎年10月頃に改定され、物価や生活費を考慮して金額が決まります。
特定(産業別)最低賃金は、特定の産業に従事する労働者に適用される最低賃金です。地域別最低賃金よりも高い金額が設定されている場合があり、該当する産業で働く場合はこちらが優先されます。
最低賃金は時間給で表示されますが、月給や日給で働いている場合でも、時間単位に換算して最低賃金以上であることが求められます。最低賃金の仕組みについて詳しくはこちらをご確認ください。
外国人労働者にも最低賃金法は適用される
結論から言えば、最低賃金法は外国人労働者にも完全に適用されます。国籍、在留資格の種類、雇用形態に関係なく、日本国内で働く全ての人が対象です。
適用される在留資格
以下の在留資格を持つ外国人は、全て最低賃金法の対象となります。
- 技術・人文知識・国際業務ビザで働くオフィスワーカー
- 特定技能ビザで働く技能労働者
- 技能実習生(育成就労含む)
- 留学生のアルバイト(資格外活動許可取得者)
- 永住者・定住者として働く方
- 家族滞在の資格外活動で働く方
適用される雇用形態
正社員だけでなく、以下の全ての雇用形態にも適用されます。
- パートタイム・アルバイト
- 契約社員・期間工
- 派遣労働者
- 日雇い労働者
つまり、日本で合法的に働いている限り、どのような立場であっても最低賃金以上の賃金を受け取る権利があるのです。これは労働基準法第3条で国籍による差別的取扱いが禁止されていることにも基づいています。
在留資格について詳しく知りたい方は、在留資格・ビザの基礎知識完全ガイドも併せてご覧ください。
2025年度の都道府県別最低賃金一覧
最低賃金は毎年改定されます。2025年度の主要な都道府県の最低賃金は以下の通りです。
| 都道府県 | 最低賃金(時給) | 月収目安(160時間) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,226円 | 約196,160円 | 全国最高 |
| 神奈川県 | 1,225円 | 約196,000円 | 東京に次いで高い |
| 大阪府 | 1,177円 | 約188,320円 | 関西圏最高 |
| 愛知県 | 1,127円 | 約180,320円 | 東海圏の中心 |
| 福岡県 | 1,072円 | 約171,520円 | 九州最高 |
| 北海道 | 1,071円 | 約171,360円 | 北海道全域適用 |
| 宮城県 | 1,053円 | 約168,480円 | 東北最高 |
| 宮崎県 | 1,023円 | 約163,680円 | 全国最低水準 |
| 沖縄県 | 1,023円 | 約163,680円 | 全国最低水準 |
※月収目安は1日8時間×月20日勤務で計算した概算額(税・社会保険料控除前)
自分の給与が最低賃金を下回っていないか確認する際は、基本給を月の労働時間で割った時給が、勤務地の都道府県の最低賃金以上であることを確認しましょう。給与や待遇について詳しくは給料・年収・待遇ガイドをご覧ください。
最低賃金に含まれるもの・含まれないもの
最低賃金の計算において、全ての手当が対象に含まれるわけではありません。正しく理解しておくことが重要です。
最低賃金に含まれるもの
- 基本給
- 職務手当
- 技能手当
最低賃金に含まれないもの
以下の賃金は最低賃金の計算に含めることができません。
- 精皆勤手当:出勤状況に応じて支給されるもの
- 通勤手当:交通費として支給されるもの
- 家族手当:扶養家族がいる場合に支給されるもの
- 時間外手当(残業代):法定労働時間を超えた分の割増賃金
- 深夜手当:深夜勤務に対する割増賃金
- 休日手当:休日出勤に対する割増賃金
- 賞与(ボーナス):臨時に支払われる賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
つまり、基本給だけで最低賃金をクリアしている必要があり、残業代や通勤手当を含めて最低賃金を計算することはできません。最低賃金の計算方法についてはこちらで詳しく解説されています。
特定技能・技能実習生の特別な注意点
特定技能ビザや技能実習制度(育成就労制度)で働く外国人には、最低賃金に加えて特別な賃金ルールがあります。
特定技能外国人の場合
特定技能外国人を雇用する場合、雇用主には「日本人と同等以上の報酬」を支払う義務があります。これは単に最低賃金をクリアすれば良いというものではなく、同じ職場で同じ業務を行う日本人労働者と比較して、同等以上の賃金を設定する必要があります。
この基準を満たさない場合、特定技能外国人の在留資格が取り消される可能性もあるため、非常に重要なルールです。特定技能ビザの詳細も確認しておきましょう。
技能実習生の場合
技能実習生にも最低賃金法は完全に適用されます。「技能を学ぶ立場だから」「教育の手間がかかるから」といった理由で最低賃金を下回る賃金を設定することは違法です。
残念ながら、技能実習生に対する賃金に関する違反事例は後を絶ちません。もし自分の賃金が最低賃金を下回っていると感じた場合は、速やかに相談機関に連絡することをお勧めします。
労働法全般について知りたい方は、労働法・職場の権利ガイドを参照してください。
最低賃金違反の罰則と対処法
違反時の罰則
最低賃金法に違反した使用者には、以下の罰則が科されます。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 最低賃金未満の賃金支払い | 50万円以下の罰金 |
| 労働者への最低賃金の周知義務違反 | 30万円以下の罰金 |
| 労働基準監督署への報告拒否 | 30万円以下の罰金 |
| 立ち入り検査の拒否・妨害 | 30万円以下の罰金 |
最低賃金に達しない賃金を定める労働契約は、その部分が無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。つまり、差額分を後から請求する権利があります。罰則の詳細はこちらで確認できます。
賃金が低いと感じた場合の対処法
- 給与明細を確認する:基本給を実労働時間で割り、時給を計算する
- 勤務地の最低賃金を調べる:厚生労働省のウェブサイトで最新の最低賃金を確認
- 会社に申し入れる:最低賃金を下回っている場合は、まず会社に改善を求める
- 労働基準監督署に相談する:会社が対応しない場合は、最寄りの労基署に相談
- 外国人労働者向け相談窓口を利用する:厚生労働省の「外国人労働者向け相談ダイヤル」(多言語対応)を利用
外国人が知っておくべき賃金に関する権利
最低賃金以外にも、外国人労働者が知っておくべき賃金に関する重要な権利があります。
賃金の全額払い原則:賃金は全額を支払わなければなりません。法律で認められた控除(税金・社会保険料)以外を差し引くことは原則として違法です。税金や社会保険については税金・社会保険・年金の完全ガイドをご覧ください。
賃金の毎月払い・一定期日払い原則:賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払わなければなりません。
残業代の支払い:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合は、25%以上の割増賃金が発生します。深夜労働(22時~5時)は25%以上、法定休日労働は35%以上の割増です。
賃金の通貨払い原則:賃金は日本円で支払わなければなりません。物品や外貨での支払いは原則として認められていません。
これらの権利は外国人労働者の権利保護に関する法的枠組みにも詳しく記載されています。
まとめ:自分の権利を知り、適正な賃金を受け取ろう
最低賃金法は、国籍・在留資格・雇用形態に関係なく、日本で働く全ての労働者に適用されます。外国人だからといって、最低賃金以下の賃金で働く必要は一切ありません。
自分を守るためにできることをまとめます。
- 毎年の最低賃金改定を確認する(10月頃に改定)
- 給与明細を毎月チェックし、時給換算で最低賃金以上であることを確認する
- 問題があれば、労働基準監督署や外国人相談窓口に迷わず相談する
- 雇用契約書をしっかり確認し、保管しておく
日本で安心して働くためには、自分の権利を正しく理解することが第一歩です。わからないことがあれば、日本のビジネスマナー・文化完全ガイドや転職・キャリアアップ戦略完全ガイドも参考にしながら、充実したキャリアを築いていきましょう。
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