雇用契約書の確認ポイントと注意点

外国人労働者が雇用契約書で確認すべき12のチェックポイントと注意点を詳しく解説します。2024年4月法改正対応の必須記載事項、在留資格との整合性チェック、給与・労働条件の確認方法、トラブル防止策まで網羅した完全ガイドです。契約書でよく使われる日本語表現一覧も掲載。
雇用契約書の確認ポイントと注意点【外国人労働者必読ガイド】
日本で働く外国人にとって、雇用契約書は単なる書類ではありません。あなたの労働条件、権利、そして在留資格にも直結する極めて重要な文書です。しかし、日本語で書かれた契約書の内容を正確に理解し、不利な条件がないか確認するのは容易ではありません。
本記事では、外国人労働者が雇用契約書を確認する際に必ずチェックすべきポイントと、トラブルを未然に防ぐための注意点を詳しく解説します。2024年4月の法改正で追加された必須記載項目にも対応していますので、これから就職する方も、すでに働いている方も、ぜひ参考にしてください。
雇用契約書とは?労働条件通知書との違い
雇用契約書は、雇用主(会社)と労働者の間で結ぶ労働契約の内容を書面にしたものです。よく混同されるのが「労働条件通知書」ですが、この2つは別々の書類です。
| 項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
|---|---|---|
| 法的義務 | 義務ではないが推奨 | 交付義務あり(労働基準法第15条) |
| 署名・押印 | 雇用主・労働者双方が必要 | 雇用主のみ |
| 役割 | 双方の合意を確認 | 労働条件を一方的に通知 |
| 在留資格申請 | 提出書類として必要 | 補足資料として使用 |
重要なのは、雇用契約書を交わしていても労働条件通知書の交付は別途必要だという点です。「雇用契約書があるから労働条件通知書は不要」という認識は間違いですので注意しましょう。
外国人労働者にとって雇用契約書は、在留資格(ビザ)の申請に必要な書類でもあります。入国管理局に提出する際、契約内容が在留資格の要件を満たしているかどうかが審査されます。
雇用契約書で必ず確認すべき12のチェックポイント
雇用契約書を受け取ったら、以下の項目を一つずつ確認しましょう。外国人向け雇用契約書のチェックリストとして、12の重要ポイントを解説します。
1. 契約期間と更新条件
契約期間が明記されているか、更新の有無と条件を確認します。有期契約の場合、契約期間は原則3年以内(専門的知識を持つ労働者は5年以内)です。在留期間との整合性も重要で、在留期間を超える契約期間は設定できません。
2. 就業場所と業務内容
就業場所が具体的に記載されているか確認しましょう。業務内容は、あなたの在留資格で許可されている活動範囲に収まっている必要があります。在留資格の範囲外の業務を行うと、不法就労となる可能性があります。
3. 給与・賃金
基本給、各種手当、支給日、支払い方法が明記されているか確認します。外国人労働者の給与は、同じ業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。2024年10月以降の全国平均最低賃金は時間額1,055円です。給与・待遇の詳細についても理解しておきましょう。
4. 固定残業代(みなし残業)
固定残業代が含まれている場合、その金額と対象時間数が明記されている必要があります。例えば「月給に20時間分の固定残業代5万円を含む」のように具体的に記載されていなければなりません。
5. 労働時間と休日
始業・終業時刻、休憩時間、シフト制の有無を確認します。法定労働時間は1日8時間、週40時間です。休日は最低でも週1日、または4週間に4日以上が必要です。
6. 社会保険・労働保険
社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(雇用保険・労災保険)への加入について確認しましょう。外国人労働者にも日本人と同等に社会保険・労働保険が適用されます。
外国人労働者特有の注意すべき契約条項
一般的な確認事項に加えて、外国人労働者だからこそ注意すべき特有のポイントがあります。外国人雇用契約書のポイントを参考に、以下の項目を必ず確認してください。
在留資格に関する停止条件
雇用契約書には「本契約の効力は、在留資格の許可を得ることを条件とする」という停止条件が含まれているか確認しましょう。これは、万が一就労ビザが取得できなかった場合に契約が自動的に無効になるための重要な条項です。
同様に、「在留資格を喪失した場合は本契約を終了する」という条項も確認してください。これにより、ビザの更新ができなかった場合の取り扱いが明確になります。
契約書の言語
外国人労働者の場合、雇用契約書はできるだけ母国語または理解できる言語で作成されるべきです。日本語のみの契約書では、内容を十分に理解できない可能性があります。
厚生労働省はモデル労働条件通知書を英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語などで提供しています。会社に母国語版の作成を依頼するか、翻訳を手配してもらいましょう。
業務内容と在留資格の整合性
契約書に記載された業務内容が、あなたの在留資格で許可されている範囲と一致しているか必ず確認してください。例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、単純労働が主な業務内容として記載されている場合、在留資格の取り消しや更新拒否につながる可能性があります。
2024年4月法改正で追加された必須記載事項
2024年4月1日施行の法改正により、労働条件の明示事項が追加されました。以下の新しい必須記載事項が含まれているか確認しましょう。
| 追加された記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 就業場所・業務の変更の範囲 | 将来的に配置転換や業務変更がある場合、その範囲を明示 |
| 更新上限の有無と内容 | 有期契約の場合、更新回数や通算期間の上限 |
| 無期転換申込権 | 有期契約が通算5年を超えた場合の無期転換について |
これらの項目は2024年4月以降に締結・更新される契約に適用されます。特に有期契約で働く外国人労働者は、更新上限と無期転換の権利について理解しておくことが重要です。
契約内容と実態が異なる場合の対処法
雇用契約書に記載された労働条件と、実際の労働環境が異なるケースは残念ながら存在します。このような場合、労働基準法第15条2項により、労働者は即時に契約を解除することができます。
さらに重要なのは、契約解除後14日以内に帰国する場合、企業が渡航費用を負担しなければならないという規定です。これは外国人労働者を保護するための重要な制度です。
契約内容と実態が異なる場合の対処手順は以下の通りです。
- 証拠を収集する - 実際の労働時間、給与明細、業務内容を記録
- 会社に改善を求める - 書面で具体的な相違点を指摘
- 相談窓口に連絡する - 労働基準監督署や外国人労働者向け相談窓口に相談
- 法的措置を検討する - 改善されない場合は、労働法の専門家に相談
外国人労働者向けの無料相談窓口として、厚生労働省の「外国人労働者向け相談ダイヤル」(0120-928-370)があり、多言語で対応しています。
雇用契約書のトラブル事例と防止策
実際に外国人労働者が経験しやすいトラブル事例と、その防止策を紹介します。
| トラブル事例 | 防止策 |
|---|---|
| 契約書と異なる業務をさせられる | 業務内容を具体的に確認し、範囲外の業務は書面で拒否 |
| 残業代が支払われない | 固定残業代の有無と超過分の支払いについて確認 |
| 契約更新を一方的に拒否される | 更新条件と基準を事前に書面で確認 |
| 社会保険に加入させてもらえない | 加入条件を満たしているか確認し、未加入なら年金事務所に相談 |
| 給与から不当な天引きがある | 控除項目を確認し、同意していない天引きは違法と主張 |
トラブルを防ぐ最も効果的な方法は、契約書に署名する前に内容をしっかり確認することです。理解できない部分があれば、必ず説明を求めましょう。「私が理解できる言語により労働条件の説明を受け、雇用契約書について十分に理解し承諾しました」という文言が契約書に含まれている場合もありますので、本当に理解してから署名してください。
契約書確認時に役立つ日本語表現
雇用契約書でよく使われる日本語表現を理解しておくと、内容の確認がスムーズになります。日本語能力の向上と合わせて、以下の専門用語を覚えておきましょう。
| 日本語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 基本給 | きほんきゅう | Base salary |
| 諸手当 | しょてあて | Various allowances |
| 時間外労働 | じかんがいろうどう | Overtime work |
| 有給休暇 | ゆうきゅうきゅうか | Paid leave |
| 試用期間 | しようきかん | Probation period |
| 退職金 | たいしょくきん | Retirement allowance |
| 懲戒解雇 | ちょうかいかいこ | Disciplinary dismissal |
| 配置転換 | はいちてんかん | Job transfer/reassignment |
まとめ:契約書確認は自分を守る第一歩
雇用契約書の確認は、日本で安心して働くための第一歩です。特に外国人労働者は、在留資格との整合性、母国語での説明、停止条件など、日本人とは異なる特有のポイントにも注意が必要です。
契約書に署名する前に、必ず以下を確認してください。
- 業務内容が在留資格の範囲内であること
- 給与が日本人と同等以上であること
- 在留資格に関する停止条件が含まれていること
- 母国語または理解できる言語での説明を受けたこと
- 2024年法改正の新規記載事項が含まれていること
不明な点があれば、転職エージェントや行政書士、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。自分の権利を知り、適切な契約を結ぶことが、日本での充実したキャリアにつながります。
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