EPA(経済連携協定)介護士制度の解説

EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者制度の仕組みを徹底解説。インドネシア・フィリピン・ベトナムからの受入れ条件、国家試験の合格率、滞在期間、他制度との比較まで、外国人が日本で介護士を目指すために必要な情報を網羅しています。
EPA(経済連携協定)介護士制度の解説|外国人が日本で介護福祉士を目指す方法
日本の高齢化社会が進む中、介護人材の確保は重要な課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定) に基づく介護福祉士候補者の受入れ制度です。
この制度は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国から、日本の介護施設で就労・研修をしながら介護福祉士の国家資格取得を目指す外国人を受け入れる仕組みです。本記事では、EPA介護士制度の仕組み、受入れ条件、候補者の要件、試験対策、メリット・デメリットまで徹底解説します。
日本で介護・医療業界で働くことを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
EPA介護福祉士候補者制度とは
EPA介護福祉士候補者制度とは、日本と相手国との間で締結された経済連携協定(EPA)に基づき、外国人が日本の介護施設で就労・研修をしながら、介護福祉士の国家資格取得を目指す 制度です。
この制度は2008年にインドネシアとの間で開始され、同年にフィリピン、2014年にはベトナムからの受入れも始まりました。2019年1月時点で合計3,165名のEPA介護福祉士が日本で就労しており、年々受入れ数は増加傾向にあります。
重要なポイントとして、この制度はあくまでも 二国間の経済活動を通じた連携強化 が目的であり、単純な介護人材の不足を補充するための措置ではありません。そのため、候補者には一定の学歴や資格要件が求められ、質の高い人材が来日します。
受入れの調整は、国内唯一の受入れ調整機関である 国際厚生事業団(JICWELS) が担当しています。
国別の候補者要件と受入れルート
EPA介護福祉士候補者になるための要件は、出身国によって異なります。以下の表で各国の条件を比較してみましょう。
| 項目 | インドネシア | フィリピン | ベトナム |
|---|---|---|---|
| 受入れ開始年 | 2008年 | 2008年 | 2014年 |
| 学歴要件 | 高等教育機関の修了証書Ⅲ以上 | 4年制大学卒業 | 3年制または4年制看護課程修了 |
| 資格要件 | インドネシア政府による介護士認定 | TESDA(技術教育技能開発庁)の認定保持 | 看護課程修了証明 |
| 日本語能力 | 入国前研修で学習(N5程度以上) | 日本語能力試験N5程度以上 | 日本語能力試験N3以上 |
| 入国前研修 | 約6ヶ月の日本語研修 | 約6ヶ月の日本語研修 | 約12ヶ月の日本語研修 |
| 入国後研修 | 約6ヶ月 | 約6ヶ月 | 約2.5ヶ月 |
ベトナムからの候補者は、入国前に約12ヶ月の日本語研修を受け、N3以上 の日本語能力が求められるため、来日時点での日本語力が比較的高い傾向にあります。
日本語能力と語学スキルについては、別記事で詳しく解説しています。
受入れ施設の条件と申請手続き
EPA介護福祉士候補者を受け入れるには、施設側も厳しい条件を満たす必要があります。主な条件は以下の通りです。
施設の基本要件:
- 法令に基づく職員の配置基準を満たしている 定員30人以上 の施設であること
- 常勤介護職員の 4割以上が介護福祉士 の資格を持つ職員であること
- 候補者に対して 日本人と同等以上の報酬 を支払うこと
- 適切な研修体制を確保できること
- 候補者の宿泊施設を用意できること
- 候補者の帰国費用の確保などの帰国担保措置を講じることができること
受入れの流れとしては、まずJICWELSに受入れ希望を提出し、マッチングを経て候補者の選定が行われます。その後、入国前研修・入国後研修を経て、施設での就労・研修が始まります。
施設側は候補者の学習支援体制を整えることも重要です。介護・医療業界の詳しい情報も参考にしてください。
日本での給料・年収・待遇についても事前に確認しておくことをおすすめします。
滞在期間と在留資格の仕組み
EPA介護福祉士候補者の在留資格は 「特定活動」 です。滞在期間や資格取得後の扱いについて整理しましょう。
候補者としての滞在期間:
- 基本の滞在期間は 4年間
- 4年目の国家試験で不合格の場合、1年間の滞在延長 が認められる(合計最長5年)
- 滞在中は就労しながら国家試験の学習を行う
介護福祉士資格取得後:
- 在留資格を 「介護」 に変更可能
- 在留期間の更新回数に制限なし(実質的に 永続的に就労可能)
- 配偶者や子どもの帯同も認められる
不合格の場合:
- 滞在期限までに合格できなかった場合は 原則として帰国
- ただし、一定条件を満たせば「特定技能1号」への移行も検討可能
特定活動ビザの種類と申請条件については、詳しくまとめた記事がありますので参考にしてください。また、在留資格・ビザの基礎知識も併せてご確認ください。
介護福祉士国家試験と合格率
EPA介護福祉士候補者にとって最大の壁となるのが、介護福祉士国家試験 への合格です。試験の概要と合格率を見てみましょう。
試験の特徴:
- 年1回(1月末)に実施される筆記試験
- 出題は全て日本語
- 125問(5肢択一式)を220分で解答
EPA候補者への特別配慮:
- 問題用紙の漢字に ふりがなを付記
- 筆記試験の時間を 最大1.5倍(330分)まで延長 可能
- 英語の注釈付き問題用紙の使用(フィリピン・インドネシア候補者)
近年の合格率:
| 年度 | EPA候補者受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 日本人含む全体合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 約800名 | 約300名 | 36.9% | 84.3% |
| 2023年度 | 1,153名 | 754名 | 65.4% | 82.8% |
2023年度の合格率は 65.4% と、前年度の36.9%から大幅に上昇しました。これは学習支援体制の充実や、候補者の日本語能力向上によるものと考えられています。
詳しい試験情報は社会福祉振興・試験センターで確認できます。
EPA制度のメリットとデメリット
EPA介護福祉士候補者制度には、候補者側・施設側それぞれにメリットとデメリットがあります。
候補者のメリット:
- 日本で介護福祉士の国家資格を取得できる
- 資格取得後は在留期間の制限なく日本で働ける
- 日本人と同等以上の待遇が保証される
- 入国前・入国後の日本語研修が充実している
- 家族の帯同も可能(資格取得後)
候補者のデメリット:
- 4年以内に国家試験に合格しなければ原則帰国
- 日本語での国家試験は言語面でハードルが高い
- 就労しながら試験勉強の時間を確保する必要がある
施設のメリット:
- 一定の教育を受けた質の高い人材を確保できる
- モチベーションの高い外国人材が多い
- 日本のビジネスマナー・文化への適応意欲が高い人材
施設のデメリット:
- 受入れ施設の条件が厳しい(定員30人以上、介護福祉士4割以上など)
- 候補者の学習支援や生活支援のコストがかかる
- JICWELSを通した手続きが煩雑で時間がかかる
EPA制度と他の外国人介護人材受入れ制度の比較
現在、日本で外国人が介護分野で働くには、EPA以外にもいくつかの制度があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 項目 | EPA介護福祉士候補者 | 特定技能1号(介護) | 技能実習(介護) | 在留資格「介護」 |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 二国間の経済連携 | 人材不足への対応 | 技能移転(国際貢献) | 専門的な就労 |
| 対象国 | 3カ国のみ | 制限なし | 制限なし | 制限なし |
| 日本語要件 | N5〜N3以上 | N4以上 | N4以上 | 不問(養成校卒業が条件) |
| 滞在期間 | 最長5年 | 最長5年 | 最長5年 | 制限なし |
| 家族帯同 | 資格取得後可 | 不可 | 不可 | 可 |
| 転職 | 不可 | 可 | 不可 | 可 |
特定技能ビザは対象国の制限がなく転職も可能なため、近年はEPAよりも特定技能での受入れが増加しています。詳しい比較は外国人が活躍する業界トレンドでも解説しています。
EPA介護福祉士候補者の生活と学習支援
EPA候補者が日本で成功するためには、施設・周囲のサポートが不可欠です。研究によると、候補者の定着には以下の要素が重要であることがわかっています。
職場環境の整備:
- 日本人スタッフとの良好なコミュニケーション環境
- インドネシア・フィリピン・ベトナム出身の先輩職員の存在(研究論文による)
- 文化や生活習慣の相互理解を促進する取り組み
学習支援体制:
- 業務時間内での学習時間の確保
- 国家試験対策の教材提供と学習指導
- 日本語能力向上のための継続的な語学サポート
- 模擬試験の定期的な実施
生活支援:
- 住居の提供と生活環境の整備
- 住居・生活インフラに関する情報提供
- 地域コミュニティとの交流機会の創出
- 税金・社会保険・年金に関する説明
ネットワーキング・コミュニティを活用することも、候補者の精神的なサポートにつながります。
EPA介護士制度の今後と最新動向
EPA介護福祉士候補者制度は開始から15年以上が経過し、制度の改善や見直しが進んでいます。
最近の動向:
- 合格率の大幅改善(2023年度65.4%)に見られる学習支援の充実
- 不合格者の「特定技能」への移行パスの整備
- デジタル化による業務効率化と候補者の負担軽減
- 介護現場での多文化共生に向けた取り組みの推進
今後の課題:
- 受入れ施設の条件緩和(中小規模施設への拡大)
- 国家試験における言語面でのさらなる配慮
- 候補者のキャリアパスの多様化
- キャリアアップ戦略の構築支援
EPA制度を活用して日本で介護の道を目指す方は、まず日本での就職活動の基礎知識を把握した上で、JICWELSへの相談をおすすめします。求人サイト・転職エージェントの活用も効果的です。
まとめ
EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者制度は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国から質の高い介護人材を受け入れ、日本の介護福祉士国家資格の取得を支援する制度です。
制度のポイントをまとめると:
- 対象国は3カ国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)で、国ごとに要件が異なる
- 滞在期間は最長5年で、資格取得後は在留制限なく就労可能
- 2023年度の合格率は65.4%と大幅に改善
- 受入れ施設の条件は厳しいが、質の高い人材が確保できる
- 他制度との比較検討が重要(特定技能、技能実習、在留資格「介護」)
日本で介護の仕事に就きたいと考えている外国人の方は、自分の出身国や要件に合った制度を選ぶことが大切です。労働法・職場の権利についても事前に理解しておきましょう。
EPA制度についてさらに詳しく知りたい方は、JICWELS公式サイトや厚生労働省の案内ページをご確認ください。
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