技能実習から特定技能への移行方法

技能実習から特定技能1号への移行条件、手続きの流れ、試験免除の仕組み、分野別の対応表、国籍別の追加手続きまで徹底解説。準備期間やよくある失敗パターンと対策も紹介します。特定技能労働者の70%が技能実習からの移行者です。
技能実習から特定技能への移行方法|条件・手続き・注意点を徹底解説
技能実習制度で日本に滞在している外国人の方にとって、「このまま日本で働き続けたい」と思ったとき、最も現実的な選択肢が特定技能ビザへの移行です。実際に、特定技能労働者の約70%が技能実習からの移行者であり、最も一般的なルートとなっています。
しかし、移行にはさまざまな条件や手続きがあり、準備不足だと申請が通らないケースもあります。この記事では、技能実習から特定技能への移行条件、具体的な手続きの流れ、そして見落としがちな注意点まで詳しく解説します。
技能実習と特定技能の違いを理解しよう
移行を検討する前に、まず両制度の違いを理解しておくことが重要です。技能実習は「技術移転による国際貢献」を目的とした制度であるのに対し、特定技能は「人手不足の解消」を目的とした就労ビザです。
| 比較項目 | 技能実習 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 技術移転・国際貢献 | 人手不足の解消 | 人手不足の解消 |
| 在留期間 | 最長5年 | 最長5年 | 上限なし(更新可) |
| 転職の可否 | 原則不可 | 同一分野内で可能 | 同一分野内で可能 |
| 家族の帯同 | 不可 | 不可 | 配偶者・子のみ可 |
| 対象分野 | 90職種165作業 | 16分野 | 11分野 |
| 永住権の可能性 | なし | なし | あり(在留10年以上) |
| 受入れ機関の変更 | やむを得ない場合のみ | 自由に可能 | 自由に可能 |
特定技能に移行する最大のメリットは、転職が可能になることと、特定技能2号への道が開けることです。特定技能2号に移行できれば、在留期間の上限がなくなり、永住権の申請も視野に入ります。
技能実習から特定技能1号への移行条件
技能実習から特定技能1号への移行には、以下の条件を満たす必要があります。
条件1:技能実習2号を「良好に修了」していること
「良好に修了」とは、具体的に以下のいずれかを満たすことを意味します。
- 技能実習を2年10ヶ月以上修了していること
- 技能検定3級または同等レベルの技能実習評価試験に合格していること
- もしくは、技能実習生に関する評価調書が作成されていること
技能実習1号のみを修了した場合は、この条件を満たしませんので注意が必要です。技能実習2号への移行ができていない方は、まず2号への移行を目指しましょう。
条件2:移行先の分野に関連性があること
技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務区分に関連性が認められることが必要です。ただし、関連性が認められない場合でも、移行先の分野の技能試験に合格すれば移行は可能です。
試験免除の仕組み
移行パターンによって試験免除の範囲が異なります。
| 移行パターン | 技能試験 | 日本語試験 |
|---|---|---|
| 同分野への移行(技能実習2号良好修了) | 免除 | 免除 |
| 異分野への移行(技能実習2号良好修了) | 合格が必要 | 免除 |
| 技能実習未修了・1号のみ修了 | 合格が必要 | 合格が必要 |
同じ分野への移行であれば、技能試験も日本語試験も両方免除されるため、最もスムーズに移行できます。日本語能力に不安がある方でも、技能実習2号を良好に修了していれば日本語試験は免除されます。
移行手続きの具体的な流れ【5ステップ】
技能実習から特定技能への移行手続きは、以下の5ステップで進めます。準備期間として3~4ヶ月を見込んでおくことをおすすめします。
ステップ1:雇用契約の締結
特定技能1号で定められた基準に適合する雇用契約を締結します。日本人と同等以上の報酬が求められるため、技能実習時よりも給与が上がるケースが多いです。具体的には以下の条件を満たす必要があります。
- 日本人と同等以上の報酬額
- フルタイムの雇用契約
- 社会保険への加入
ステップ2:支援計画の策定
受入れ機関は、特定技能外国人に対する支援計画を策定する必要があります。自社で支援体制を整えるか、登録支援機関に委託するかを選択します。支援内容には以下が含まれます。
- 入国前の事前ガイダンス
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情対応
- 転職支援(解雇時)
ステップ3:必要書類の準備
在留資格変更に必要な書類を準備します。主な書類は以下の通りです。
- 在留資格変更許可申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 雇用契約書の写し
- 支援計画書
- 技能実習評価試験の合格証明書または評価調書
- 健康診断書
- 税金・社会保険の納付証明書
ステップ4:出入国在留管理局への申請
書類が整ったら、出入国在留管理局(入管)に在留資格変更許可申請を行います。在留期間満了の2~3ヶ月前には申請することをおすすめします。
ステップ5:審査・許可
審査期間は通常1~2ヶ月です。ただし、書類に不備があると審査期間が長くなるため、事前の確認が重要です。許可が下りれば、新しい在留カードが発行されます。
移行のメリット・デメリット
メリット
- 転職が可能になる:同一分野内であれば自由に職場を変更でき、より良い条件の職場を探せます
- 長期滞在の可能性:特定技能1号で5年、2号に移行すればさらに長く日本に滞在できます
- 給与アップの可能性:「経験者」としての雇用になるため、技能実習時より高い報酬が期待できます
- 永住権への道:特定技能2号に移行し在留10年を超えれば、永住権申請の可能性があります
- 試験免除の特典:同分野なら技能試験・日本語試験が免除されます
デメリット
- 家族帯同不可:特定技能1号では配偶者や子どもを日本に呼ぶことはできません(2号なら可能)
- 在留期間の上限:1号は最長5年で、更新はできません
- 分野の制限:特定技能の16分野に限定されるため、すべての技能実習職種から移行できるわけではありません
- 手続きの複雑さ:書類準備や申請に時間と労力がかかります
分野別の移行対応表と注意点
技能実習のすべての職種が特定技能に移行できるわけではありません。以下は主要な分野の対応関係です。
| 技能実習の職種 | 特定技能の分野 | 移行の可否 |
|---|---|---|
| 耕種農業・畜産農業 | 農業 | ○ 可能 |
| 漁船漁業・養殖業 | 漁業 | ○ 可能 |
| 食品製造業全般 | 飲食料品製造業 | ○ 可能 |
| 建築・土木関係 | 建設 | ○ 可能(追加要件あり) |
| 介護 | 介護 | ○ 可能 |
| 機械加工・溶接等 | 素形材・産業機械・電気電子 | ○ 可能 |
| 自動車整備 | 自動車整備 | ○ 可能 |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング | ○ 可能 |
| 繊維・衣服関係 | (対象外) | × 不可 |
特に建設分野では、国土交通省による建設特定技能受入計画の認定が追加で必要となります(参照:法務省 特定技能制度について)。
国籍別の追加手続き
特定技能への移行にあたって、出身国によって追加の手続きが必要な場合があります。
- ベトナム:事前にオンラインで申請を行い、在日ベトナム大使館で推薦者表を取得する必要があります
- フィリピン:POEA(海外雇用庁)への登録が必要です
- インドネシア:労働移住省への届出が必要です
- カンボジア:送出し機関を通じた手続きが求められます
これらの手続きを怠ると、在留資格の変更申請が認められないことがあるため、必ず確認しましょう(参照:マイナビグローバル 技能実習から特定技能への移行解説)。
よくある失敗と対策
技能実習から特定技能への移行でよくある失敗パターンと、その対策を紹介します。
失敗1:準備開始が遅い
在留期間満了ギリギリで準備を始めると、書類が間に合わないことがあります。少なくとも3~4ヶ月前から準備を始めましょう。
失敗2:税金や社会保険の滞納
技能実習中に所得税や住民税の支払いを怠っていると、在留資格変更の審査で不利になる可能性があります。未払いがある場合は、早急に対応しましょう。
失敗3:書類の不備
申請書類に不備があると審査期間が大幅に延び、最悪の場合は不許可になることもあります。行政書士などの専門家に依頼することも検討しましょう(参照:ウィルオブ 技能実習から特定技能への移行ガイド)。
失敗4:対象外の分野への移行を試みる
技能実習の職種が特定技能の16分野に対応していない場合(例:繊維・衣服関係)、直接の移行はできません。別の分野の技能試験に合格する必要があります。
2027年以降の制度変更について
日本政府は2024年に、技能実習制度に代わる新制度「育成就労制度」を2027年に開始することを発表しました。この制度変更により、以下のような変化が予定されています。
- 技能実習制度は段階的に「育成就労制度」に移行
- 転職の自由度が拡大される見込み
- 特定技能との接続がよりスムーズになる予定
現在技能実習中の方は、既存の制度のもとで特定技能への移行が可能ですが、今後の制度変更にも注目しておくことをおすすめします(参照:JITCO 特定技能制度について)。
まとめ:スムーズな移行のために
技能実習から特定技能への移行は、日本で長く働き続けたい外国人にとって最も一般的で現実的なルートです。特定技能労働者の約70%がこのルートで移行しており、2023年には特定技能労働者が約14万人に達するなど、制度の利用は年々拡大しています(参照:StepJob 技能実習から特定技能への移行ガイド)。
移行を成功させるためのポイントをまとめると:
- 早めの準備開始:在留期間満了の3~4ヶ月前から動き出す
- 条件の確認:技能実習2号の良好修了と分野の関連性を確認
- 税金・保険の整理:滞納がないことを確認
- 国籍別手続きの確認:出身国特有の追加手続きを忘れない
- 専門家への相談:行政書士や転職エージェントの活用を検討
特定技能への移行は、あなたの日本でのキャリアを大きく広げるチャンスです。しっかりと準備を行い、新しいステップに踏み出しましょう。
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