脱退一時金の申請方法【帰国時に受取】

外国人が帰国時に日本の厚生年金を払い戻せる脱退一時金の申請方法を徹底解説。必要書類、手続きの流れ、申請期限、源泉徴収の還付方法まで、ステップごとにわかりやすく紹介します。帰国前の準備チェックリスト付き。
脱退一時金の申請方法【帰国時に受取】完全ガイド
日本で働いた外国人が帰国する際、支払った厚生年金保険料の一部を取り戻せる制度が「脱退一時金」です。しかし、申請方法や必要書類、注意点を正しく理解していないと、せっかくの権利を失ってしまう可能性があります。
この記事では、脱退一時金の申請方法をステップごとにわかりやすく解説します。必要書類の準備から申請書の記入方法、受取までの流れ、さらには税金の還付手続きまで、帰国前に知っておくべきすべての情報を網羅しています。
脱退一時金とは?制度の基本を理解しよう
脱退一時金とは、日本の年金制度に加入していた外国人が帰国する際に、支払った厚生年金保険料の一部を払い戻してもらえる制度です。日本年金機構が管轄しており、正式には「厚生年金保険脱退一時金」と呼ばれています。
この制度が存在する理由は、日本で短期間しか働かない外国人にとって、将来の老齢年金を受け取る可能性が低いためです。支払った保険料が無駄にならないよう、一時金として返還する仕組みが設けられています。
脱退一時金の金額は、加入期間と支払った保険料の額によって決まります。2021年4月からは上限期間が3年から5年(60カ月)に引き上げられ、長期間日本で働いた外国人もより多くの金額を受け取れるようになりました。
| 加入期間 | 支給率(2024年度) | 概算支給額(月収25万円の場合) |
|---|---|---|
| 6カ月以上12カ月未満 | 約0.5カ月分 | 約5万円 |
| 12カ月以上18カ月未満 | 約1.1カ月分 | 約11万円 |
| 24カ月以上30カ月未満 | 約2.2カ月分 | 約22万円 |
| 36カ月以上42カ月未満 | 約3.3カ月分 | 約33万円 |
| 48カ月以上54カ月未満 | 約4.4カ月分 | 約44万円 |
| 54カ月以上60カ月 | 約4.9カ月分 | 約49万円 |
詳細な金額計算については、日本年金機構の公式ページで確認できます。
脱退一時金の受給資格・条件
脱退一時金を受け取るためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
1. 日本国籍を有していないこと
日本国籍を持つ方は対象外です。外国籍の方のみが申請できます。
2. 厚生年金の加入期間が6カ月以上あること
国民年金のみの加入期間は国民年金の脱退一時金として別途請求が可能です。特定技能ビザや技術・人文知識・国際業務ビザで働いていた方は、厚生年金に加入していたはずです。
3. 日本に住所を有していないこと
帰国後、日本に住民登録がない状態でなければ申請できません。出国前に必ず転出届を市区町村役場に提出してください。
4. 年金の受給権を有していないこと
老齢年金や障害年金の受給資格がある場合は、脱退一時金を請求できません。日本の年金加入期間が10年以上ある方は、将来老齢年金を受け取れる可能性があるため、慎重に検討してください。
5. 出国後2年以内に申請すること
日本に住所がなくなった日から2年以内に請求書を提出する必要があります。この期限を過ぎると、一切受け取れなくなるので注意が必要です。
申請に必要な書類一覧
脱退一時金を申請するためには、以下の書類を準備する必要があります。帰国前に準備できるものは早めに揃えておきましょう。
| 書類名 | 入手方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 脱退一時金裁定請求書 | 日本年金機構HPからダウンロード | 記入例を参考に正確に記入 |
| パスポートの写し | 自分で用意 | 氏名・生年月日・国籍・署名のページ |
| 住民票の除票の写し | 転出届提出後に市区町村で取得 | 日本に住所がないことの証明 |
| 銀行口座の証明書類 | 海外の銀行で取得 | 銀行名・支店名・口座番号・口座名義がわかるもの |
| 基礎年金番号通知書 | 年金加入時に受け取り済み | 年金手帳でも可 |
帰国前の準備が重要です。特に住民票の除票と基礎年金番号通知書は、帰国後に入手が困難になる場合があります。住居・生活インフラの整理と合わせて、計画的に準備しましょう。
申請手続きの具体的な流れ【5ステップ】
脱退一時金の申請は、以下の5つのステップで進めます。
ステップ1:帰国前の準備(出国の1〜2カ月前)
帰国が決まったら、まず以下の準備を始めましょう。
- 基礎年金番号の確認:年金手帳や基礎年金番号通知書を探す
- 転出届の準備:出国日が決まったら市区町村役場で転出届を提出
- 銀行口座の確認:母国の銀行口座が使えることを確認
- 会社への連絡:退職手続きと合わせて年金に関する書類を受け取る
転職・キャリアアップの一環として帰国する場合でも、必ず年金関連の手続きを忘れないようにしましょう。
ステップ2:転出届の提出(出国の14日前〜出国日)
転出届の提出は最も重要なステップです。これを忘れると、日本に住所があるとみなされ、脱退一時金が支給されません。
住んでいる市区町村の役場に行き、海外転出届を提出します。この際、「住民票の除票の写し」も取得しておくと安心です。
ステップ3:請求書の記入と提出(帰国後)
帰国後、脱退一時金裁定請求書に必要事項を記入します。請求書は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
記入の際の注意点:
- 住所は日本国外の住所を記入すること(日本の住所を書くと不支給になる)
- 銀行口座情報はローマ字表記で正確に記入
- 署名はパスポートと同じもの
記入した請求書と必要書類を、以下の宛先に郵送します。
〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24 日本年金機構 本部
ステップ4:審査と入金(提出から約4カ月後)
書類に不備がなければ、提出から約4カ月後に指定の海外銀行口座に入金されます。同時に「脱退一時金支給決定通知書」が送付されます。
書類に不備がある場合は、日本年金機構から連絡があります。帰国後も連絡が取れるメールアドレスや電話番号を請求書に記載しておきましょう。
ステップ5:源泉徴収税の還付手続き(任意)
脱退一時金には20.42%の所得税が源泉徴収されます。しかし、税務代理人を選任して確定申告を行うことで、この税金の還付を受けることが可能です。
詳細は国税庁の案内を参照してください。税金・社会保険の仕組みを理解しておくことで、最大限の還付を受けられます。
脱退一時金の申請でよくある失敗と対策
申請でよくある失敗を事前に知っておくことで、スムーズに手続きを進められます。
失敗1:転出届を出し忘れて帰国
最も多い失敗です。転出届を出さないと、日本に住所があるとみなされ、脱退一時金が受け取れません。帰国が決まったら、まず転出届の提出を優先してください。
失敗2:2年の期限を過ぎてしまう
帰国後の生活に追われて申請を後回しにし、気づいたときには期限切れというケースも少なくありません。帰国後できるだけ早く申請することを強くおすすめします。
失敗3:請求書に日本の住所を記入
日本の住所を記入すると「日本に住所がある」と判断され、不支給になります。必ず帰国先の海外住所を記入してください。
失敗4:銀行口座情報の不備
海外送金に対応していない口座を指定したり、口座情報に誤りがあると、入金が遅れる原因になります。銀行のSWIFTコードを含む正確な情報を記入しましょう。
失敗5:基礎年金番号がわからない
年金手帳を紛失した場合、帰国後に基礎年金番号を確認するのは非常に困難です。帰国前に必ず番号を控えておくか、年金手帳のコピーを取っておきましょう。
脱退一時金を申請する前に確認すべきこと
脱退一時金の申請は取り消しができません。一度受け取ると、それ以前のすべての年金加入期間がなくなってしまいます。以下の点を慎重に確認してから申請を決めましょう。
将来、日本に戻る可能性はあるか?
再び日本で働く予定がある場合、年金加入期間を維持した方が有利な場合があります。日本での就職活動を将来的に考えている方は、社会保障協定の有無も確認しましょう。
社会保障協定を結んでいる国か?
日本と社会保障協定を結んでいる国の出身者は、母国の年金制度との通算が可能な場合があります。この場合、脱退一時金を受け取るよりも、年金加入期間を維持した方が有利になることがあります。
現在、日本は23カ国と社会保障協定を締結しています(マイナビグローバルの解説を参照)。
年金加入期間が10年以上あるか?
年金加入期間が通算10年以上ある場合、将来的に日本の老齢年金を受け取る権利が発生します。脱退一時金を受け取ると、この権利も失われるため、十分に検討してください。
国民年金の脱退一時金との違い
厚生年金と国民年金、それぞれ別々に脱退一時金を請求できます。両方に加入期間がある場合は、それぞれ申請が必要です。
| 項目 | 厚生年金の脱退一時金 | 国民年金の脱退一時金 |
|---|---|---|
| 対象者 | 会社員として働いた外国人 | 自営業やフリーランスとして働いた外国人 |
| 必要加入期間 | 6カ月以上 | 6カ月以上 |
| 上限期間 | 60カ月(5年) | 60カ月(5年) |
| 計算基準 | 平均標準報酬額に基づく | 保険料に基づく定額 |
| 申請先 | 日本年金機構 | 日本年金機構 |
| 申請期限 | 出国後2年以内 | 出国後2年以内 |
留学生から社会人になった方の中には、国民年金と厚生年金の両方に加入期間がある場合もあるため、両方の申請を忘れないようにしましょう。
まとめ:帰国前チェックリスト
脱退一時金をスムーズに受け取るために、帰国前に以下のチェックリストを確認してください。
- 基礎年金番号を確認し、年金手帳のコピーを取る
- 市区町村役場で転出届を提出する
- 住民票の除票の写しを取得する
- パスポートのコピーを準備する
- 海外の銀行口座情報(SWIFTコード含む)を確認する
- 脱退一時金裁定請求書をダウンロードして記入する
- 社会保障協定の有無を確認し、本当に申請すべきか検討する
- 帰国後すぐに書類を郵送する
脱退一時金は、日本で働いた外国人の正当な権利です。正しい手続きで確実に受け取りましょう。日本の労働法・職場の権利や税金・社会保険制度について理解しておくことが、スムーズな手続きの鍵となります。
不明な点がある場合は、外国人雇用相談室の実務ポイント解説やリクアジの詳細解説も参考にしてください。
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