技能実習生の実態と知っておくべき権利

技能実習生の実態、法的に保障された権利、よくある問題点を詳しく解説。2024年に決定した技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行、特定技能ビザへのキャリアパスまで、技能実習生が知っておくべき情報を網羅的にまとめています。
技能実習生の実態と知っておくべき権利
日本で働く技能実習生は約35万人以上にのぼり、製造業や農業、介護など多くの産業を支えています。しかし、技能実習制度には長年にわたり様々な問題が指摘されてきました。2024年6月には制度の廃止が決定し、育成就労制度への移行が進められています。本記事では、技能実習生の実態と知っておくべき権利について詳しく解説します。これから日本で働くことを検討している方、すでに技能実習生として働いている方はぜひ参考にしてください。
技能実習制度とは?基本的な仕組みを理解する
技能実習制度は1993年に導入された制度で、開発途上国の人々に日本の技術・技能を伝えることを目的としています。JITCO(国際人材協力機構)が制度の適正な運用を支援しています。
技能実習には3つの段階があり、それぞれ在留期間が異なります。
| 段階 | 在留資格 | 期間 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 技能実習1号 | 基礎レベル | 1年間 | 基本的な技能の習得 |
| 技能実習2号 | 中級レベル | 2年間(2〜3年目) | 技能の習熟 |
| 技能実習3号 | 上級レベル | 2年間(4〜5年目) | 技能の熟達 |
受入形態には個人企業型と監理団体型の2種類があります。監理団体型では、事業協同組合や商工会などの非営利団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で技能実習を行います。現在、技能実習生の約97%が監理団体型で受け入れられています。
技能実習の対象職種は90職種165作業(2024年時点)に及び、製造業・工場や介護・医療、飲食・サービス業など幅広い分野で技能実習生が活躍しています。
技能実習生が直面する現実と問題点
技能実習制度は「国際貢献」を掲げていますが、実態は労働力確保の手段として利用されているケースが少なくありません。マイナビグローバルの調査によると、以下のような問題が報告されています。
賃金に関する問題
技能実習生は法的に日本人と同等以上の報酬が保障されていますが、実際には最低賃金ギリギリの水準で働いているケースが多く報告されています。さらに、残業代の未払いや不当な控除が行われることもあります。給料・年収・待遇について事前に確認することが重要です。
労働環境の問題
長時間労働、休日が与えられない、安全対策が不十分な職場環境など、労働基準法違反に該当する事例が後を絶ちません。労働法・職場の権利を知っておくことが自分を守る第一歩です。
転職の自由の制限
技能実習制度では原則として転職(転籍)が認められておらず、劣悪な環境であっても離脱が困難でした。この点は国際的にも批判を受けており、制度廃止の大きな要因の一つとなりました。
失踪問題
令和6年1月時点で、技能実習生の不法残留者は11,210人に達しています。劣悪な労働環境や高額な事前費用の返済に苦しむ実習生が失踪するケースが社会問題となっています。
技能実習生が持つ法的権利
技能実習生は日本の労働法の保護を受ける労働者です。以下の権利が法的に保障されています。
労働基準法に基づく権利:
- 最低賃金以上の報酬を受ける権利
- 1日8時間・週40時間を超える労働に対する残業代(25%以上の割増賃金)
- 週に少なくとも1日の休日
- 年次有給休暇(6ヶ月以上勤務で10日)
- 労災保険による補償
技能実習法に基づく保護:
- パスポートや在留カードを雇用主に取り上げられない権利
- 人権侵害があった場合の申告権
- 監理団体や外国人技能実習機構(OTIT)への相談権
技能実習生が困ったときに利用できる相談窓口は8言語に対応しており、電話・メール・オンラインコール・手紙で相談できます。在留資格・ビザに関する問題も含め、困ったことがあれば早めに相談することが大切です。
| 相談先 | 対応内容 | 連絡方法 |
|---|---|---|
| 外国人技能実習機構(OTIT) | 技能実習全般の相談 | 電話・メール(8言語対応) |
| 労働基準監督署 | 賃金未払い・労働条件 | 窓口・電話 |
| 法テラス | 法律相談全般 | 電話(多言語対応) |
| 入国管理局 | 在留資格関連 | 窓口・電話 |
| 大使館・領事館 | 本国との連携 | 窓口・電話 |
2024年の制度改革:育成就労制度への移行
2024年6月14日、30年以上続いた技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する改正法が国会で可決・成立しました。施行は2027年4月1日が予定されており、その後3年間は移行期間として技能実習制度と併存します。
制度変更の主なポイント
アデコの解説によると、育成就労制度の主な特徴は以下の通りです。
| 項目 | 技能実習制度(旧) | 育成就労制度(新) |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献・技能移転 | 人材育成・人材確保 |
| 在留期間 | 最大5年 | 原則3年 |
| 転籍(転職) | 原則不可 | 条件を満たせば可能 |
| 特定技能への移行 | 制度的連携なし | 特定技能1号への移行前提 |
| キャリアパス | 帰国前提 | 日本での長期就労可能 |
新制度では、同じ職場で1〜2年働くなどの条件を満たせば転籍(転職)が可能になります。これにより、劣悪な職場環境から離脱できなかった問題の解消が期待されています。
育成就労制度は特定技能ビザへの移行を前提としており、日本での長期的なキャリア形成が可能になります。転職・キャリアアップの選択肢が広がることで、外国人労働者にとってより良い環境が整備されることが期待されています。
技能実習生が自分を守るための実践的アドバイス
技能実習生として日本で安全に働くために、以下の点を心がけましょう。
来日前にすべきこと
- 送出機関の信頼性を確認する – 高額な手数料を請求する悪質な機関に注意
- 契約内容を母国語で確認する – 労働条件、給与、勤務時間を書面で確認
- 日本語能力を身につける – 基本的な日本語力があると権利主張がしやすい
- 相談先の連絡先を控えておく – OTIT、大使館、支援団体の連絡先
来日後に気をつけること
- 給与明細を毎月確認する – 不当な控除がないかチェック
- パスポートや在留カードは自分で管理する – 雇用主に預けない
- 労働時間を記録する – 残業時間を自分でもメモする
- 日本のビジネスマナーを学ぶ – 職場での円滑なコミュニケーション
- 困ったら早めに相談する – 問題が大きくなる前に専門機関に連絡
トラブル発生時の対応
暴力、ハラスメント、賃金未払いなどの問題が発生した場合は、以下の手順で対応してください。
- 証拠を残す – 写真、録音、メモなどで記録
- 監理団体に相談する – まずは監理団体の相談窓口に連絡
- OTIT(外国人技能実習機構)に申告する – 監理団体が対応しない場合
- 労働基準監督署に通報する – 労働法違反の場合
- 弁護士に相談する – 法テラスでは無料の法律相談が可能
技能実習から特定技能への移行ルート
技能実習を修了した後、特定技能ビザに移行して日本で長期的に働くことが可能です。特定技能1号では最大5年間の在留が認められ、特定技能2号に移行すれば在留期間の制限がなくなります。
移行に必要な条件は以下の通りです。
- 技能実習2号を良好に修了していること
- 対象分野の技能試験に合格すること(技能実習2号修了者は免除される場合あり)
- 日本語能力試験N4以上の日本語力
- 受入企業との雇用契約
特定技能では転職が可能であり、求人サイト・転職エージェントを活用して自分に合った職場を探すことができます。日本での就職活動のノウハウも参考にしてください。
まとめ:技能実習生の未来に向けて
技能実習制度には多くの問題がありましたが、2024年の法改正により育成就労制度への移行が決定し、外国人労働者の権利保護が強化される方向に進んでいます。2027年4月の新制度施行に向けて、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 技能実習生は日本の労働法で保護された労働者であり、不当な扱いに対して声を上げる権利がある
- 新しい育成就労制度では転籍(転職)が可能になり、より柔軟なキャリア形成ができる
- 困ったときは8言語対応の相談窓口を積極的に利用する
- 在留資格や労働法の基本知識を身につけ、自分の権利を守る
技能実習生として日本で働くことは大きな挑戦ですが、正しい知識と適切なサポートがあれば、充実したキャリアを築くことができます。住居・生活インフラの整備や税金・社会保険の理解も含め、日本での生活全般にわたる準備を進めていきましょう。
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